---------笑顔---------
バンドをやってみたい、漠然と願望はあるけれど、それって一緒にやる仲間が必要。イチから自分で集める、またはどこか募集してるところに入る?
‥人見知り発動。
今まで、自分から仲間を探さなくても、話しかけてくれた子たちに合わせていく感じでなんとなく馴染んで来れたけど、目的を持って自分から誰かを誘うなんて、無理‥。
無理だったら、どこか募集してるところに入るのが一番。掲示板で軽音部のチラシを見て、放課後、仲間と離れて一人見学に行った。部室の手前まで行って急に不安になり、中に入れず廊下をウロウロした。洋服を一人でショップに見に行って、店員にいっぱい話しかけられていたたまれなくなるあの感じ。やっぱり一人じゃ不安。誰か入るタイミングで一緒に入れたら。
心細くなってやはり帰ろうかと思いかけたその時、隣のクラスの小柄な女子が三人、ニコニコしながらこちらに向かってきた。入部希望の子達かもしれない。廊下の掲示物を眺めるフリをして、到着を待った。
「もう始まってる?」
急に話しかけられ、焦って、「うん、多分」
適当に返してしまった。
ドアを開けて入る三人に続けて入ると、部室の奥に女子の列。もうこんなに希望者が?
よく見るとコーナーにドラムセットが置いてあり、男子が一人、実演しながら順番にレクチャーしていた。
「わるい、音漏れするから、ドア閉めてくれる?」
立ち上がって笑顔でこっちに呼びかけてくれた彼の顔を見て、あぁ、みんなこの子が目当てで来たのか‥なんとなく察した。
声こそハスキーだけど、女子の中に居ても浮かない可愛らしい顔立ち。髪型がまるで今さっきサロンでセットしてきたような、無造作且つセンス良くフワッとまとまったクセ毛、クセ毛だよね、確かパーマは禁止のはず。
「かわいい!どこの子?美術クラス?」
「でしょう?5組だって。学年はウチらと一緒」
三人組の内の1人が小声で得意げに語る。
やっぱりそうか。あっ、でもこれはチャンスかもしれない。ドキドキしながら話しかけた。
「もしかして,入部希望?」
「ううん、イケメン見学」
1人が応え、他の2人がキャッキャと笑った。
なんだー。並んでる他の子もそうかな。
ドラムレクチャーには興味はないけど、質問をするために列に並んだ。
エイトビートを演ってる。なるほど、三拍目に左手を入れるのか。右手でずっとリズムキープして‥、足は一拍目と三拍目。足と左手のタイミングを合わせる。目を閉じて、イメトレ。
やったことないけど、出来るかも。
順番が廻ってきて、笑顔で示されたスツールに座った。間近で目を合わせると、あらためて顔の小ささと肌のきれいさに圧倒された。うわ‥きっとしっかりケアしてるんだろうな。
初対面でもフランクに笑いかけてくるこの感じ、ハワイにいた頃のビーチのボーイズ達を思い出した。日本の男の子はどちらかというと最初はシャイだったり無愛想でそっけなかったりするので,ちょっと珍しいタイプ。