---------下北沢②---------

 

下北沢は、ショップのスタッフさん、道行くひと、みんな個性的でオシャレ。原宿とは全然人種がちがう。人種?なんか差別的な言い方。そういう類の言葉を使う時はいつも気をつけなさいってダディが‥。

 

「あんまり来たことなかったけど、面白いね、シモキタ」

 

「うん。お兄ちゃんと時々来るんだ」

 

面白いもの探しで連れて来て貰って以来、シモキタは私のお気に入り。『ヴィレッジ・ヴァンガード』みたいな、本屋と雑貨屋と服屋が入り乱れたような自由すぎる品揃えと陳列はハワイにはなかったもの。色んな世界観に触れられて、すごく興味をそそられる。

 

「意外。カオリンってサブカル好き?」

 

「好きなのかな?うん、王道・メジャー路線よりも、ちょっとクセのあるアンダーグラウンドな方が性に合ってるかも」

 

「私は、いいなって思うけどサブカル入っていけないや。センスに自信ないし、みんなと同じ方が安心。なんて言うんだっけ、無難なやつ」

 

「conservative?」

 

「それー。コンサバ」

 

「大人になったらいくらでも着れるのに」

 

「サブカル着こなす大人もいるよ」

 

多英が、前方でチラシを配るソフトモヒカンのお兄さんを指差した。

 

「どうぞ!今晩、シェルターでライブやるから、時間あったら観に来て」

 

ヒヨコのような柔らかそうな金髪に、両耳に複数あけたシルバーのピアス。笑顔で配られた手書き風文字のチラシに目を惹かれ、「出番、何時頃ですか?」と訊いたら、

 

「20時。来れる?」

 

「無理無理ムリムリ!」

多英が速攻で大きく手でバツを作った。

 

「中学生なんで、遅い時間多分ムリです」

 

「そっか、残念。キミは来れる?」

 

「私も中学生」

 

「えっ、ウソだろ。色っぺー」

 

「多英、行こ」

 

チラシだけ貰って、その場を離れた。

やっぱ早くメイク落としたい。

 

「今のお兄さん、カッコよかった」

 

「多英のタイプ?」

 

「そうかも。普通の髪型してたら、もっといいんだけど」

 

「ソフトモヒカン、ダメ?」

 

「ソフトじゃないよ〜!トンガリすぎ」

 

「あのお兄さんには似合ってたけど」

 

「ウン。でもなんか、別世界のひと」

 

普通。普通って、何だろう。目立たないこと?

変に目立ちたくはないけど、周りの目を気にして、コンサバばっかりってなんかつまらない。

好きなものを自由に着こなす大人が、カッコよく見えた。