---------怖い---------
「一緒に帰るのイヤだった?じゃあ、もう少し待つか」
待っても、変わらないかもしれない。
なんとなく、感覚でわかる。
「‥‥」
「どうした?」
「オッケーしたの、ナシにしてもらっていいですか?」
「ナシって、何だよ」
「なかったことに」
「ふざけんな」
急に表情が険しくなって、声の調子が変わった。
初めてしっかり顔を見た。
ダディの影響で、そもそもイカつい感じのゴツい男性が苦手。ナイナイ、やっぱナイ。でも、いいかげんな気持ちで、仮にもオッケーしてしまったのは自分。
「ごめんなさい」
「ダメなら、最初から断れや。こういうのムカつくんだよ」
「ホントにごめんなさい」
走って逃げた。
怖い怖い怖い怖いー。
友達から、の微妙なニュアンスがわからなかった。日本人の、あ・うんの呼吸みたいなの、ホントにわからない。身体の大きな男性が怒るの、怖い。
駅に着いて、スマホを見たら多英からLINEが来てた。
「一緒に帰れなくてさびしいけど、応援してるよ😊」
すぐに電話をかけた。
「多英ー!」
「どうしたの?」
「先輩こわかった」
「なに?なに?何か、された?」
「断ったら、怒られた」
「今どこ?すぐ行く」
帰りかけの電車から戻って来てくれて、駅前のマックで話を聴いてくれた。
「じゃあ、友達から、ってオッケーしたんだね」
「友達なら、別にいいと思って」
「友達から、徐々に親密になりましょうって意味だもんね」
「シンミツ?」
「仲良くなりましょうってこと。付き合おうって」
「やっぱ間違えた。オッケーってオッケーなんだ」
「それは人によるよ。ゆっくりお互いを知ろうとする人もいる。先輩はちょっと焦ってたのかな」
「日本語、難しい‥」