---------定番---------
中学に入ってから2回、コクハクされた。
一人は多英に誘われて入ったバスケ部の先輩、もう一人は同じ園芸委員の隣のクラスの男子。
なぜか二人とも、場所は体育館の裏。確か栃木のボスもそうだったな。日本って、それが定番なの?誰かに見られると恥ずかしいんだろうか。
ハワイでは、誰かを好きになってもあらたまってコクハクはしなかった。とにかく出来るだけ側にいて自分を認知してもらい、仲良くなって、気付けば二人で過ごしている、そんな感じ。
でも、日本人はそこはケジメをつけたいのかな。拙者とお主は今日からステディとなる、よろしいか?ブシドー(武士道)だっけ。ステディにあたるエド時代の言葉がわかんない。大体、殆ど話したこともない相手とステディになろうなんて、私なら無理。理解できない。
「最初は友達からでいいから、お願いします!」
先輩の言葉に、妙に納得して、「じゃあオッケーです」と応えたら、
「よぉーしっ!」と、めっちゃガッツポーズ!
な、何?
何を得たの?この人は。
ただ、友達になっただけなのに。
その日から、練習が終わると、「一緒に帰ろう」と声をかけられるようになった。
「多英と約束があるので」
何度かスルーしたけど、落胆した顔を見るのが辛くなって、一度だけ一緒に帰った。
バスケの話、私の趣味の話、インタビューみたいに色々質問されたけど、こちらから聞きたいことがなく、後半あまり会話が弾まなかった。聞きたいことがないなんて、なんて失礼。学年も違ってあまり接点もない私を、どうして先輩は好きになってくれたんだろう。
聞きたいことあったじゃん。
「先輩、どうして私にコクハクしてくれたんですか?」
「え?‥それは‥好きだから」
「どこがいいの?」
「恥ずかしいな‥オレの一目惚れ。初めて見た時からずっと目で追ってた」
「ありがとうございます」
あぁ、またケンソンがわかんない。
「まさかオッケーしてくれると思わなくて」
オッケー? でも友達からって。
受け入れるハードルを下げるためだったのか。
「オッケーしましたけど、間違えてたかもしれないです」
「え?」
「二人で過ごすって、それはもう特別だと思う」
帰り道、先輩の仲間たちに冷やかされた。
このまま続けてたら、私は先輩の「彼女」にされてしまう。