‐‐‐‐‐‐‐好きなもの‐‐‐‐‐‐‐

 

電話に切り替えた。

 

「キター!」

 

「オイ笑」

 

「はー、ドキドキが止まんない」

 

「かけ直そうか?」

 

「大丈夫、すぐ落ち着くから」

 

「明日、会える?」

 

「うっ、ゴメン。いま実は家族とディズニーランドの近くに来てて」

 

「泊まり?」

 

「うん。日曜のお昼までこっち」

 

「そっか。もしかして誕生日恒例?」

 

「毎年じゃないけど。高校生だからそろそろイタイかな」

 

「そんなことないよ。いいじゃん」

 

「今度はショーと来たいなぁ」

 

デ、ディズニー!並ぶのはあんまり好きじゃないけど、青木が喜ぶなら並んでもいい。

 

「あと、プレゼント、ありがとう」

 

「ああ」

 

「箱を見て、アクセサリーか!あちゃーって思ったんだけど」

 

「失礼だな笑」

 

「すごく、好きな色。デザイン。ショーって、わかってる」

 

「お店のオネーサンのおかげ」

 

「ええ?それでもいいやー。好き」

 

「俺も、好き。青木のこと」

 

「やだ、ショー、キャラ変した?」

 

「してねーけど、思ったことは言うことにした」

 

人生って、いつ何が起こるかわからんから。

 

「嬉しいけど、なんか怖い」

 

「こわい?」

 

「ハッピーすぎて、今度は逆に」

 

ドキッとした。俺もどちらかというと、あんまりうまくいき過ぎると警戒する方。

 

「そっか、じゃあ小出しにするよ」

 

「そんな器用なの出来るの」

 

俺の好きなクスクス笑い。

 

「わからん。ムリかもな」

 

あー、なんだこのチャラい会話。自分の知らなかった自分が出てくる、相手によって耕されていく。

 

「みわー?」

 

青木ママの声がした。

 

「じゃあ、また」

 

「うん、またね」

 

「おやすみ、美和」

 

「ん?もう一回言って?」

 

「ヤダよ。またな」

 

やっぱハズイ。

 

「なんか、おやす美和って一体化してたけど。おやすみ、ショー」

 

電話を切ってから、お互いの好みとか趣味とか殆ど知らないことにあらためて気付いた。ディズニー好きなら、超メジャー、王道もんが好きかもな。

俺はどっちかというとサブカル、アングラ好き。かなりかけ離れてるかも。そういうのでも上手くいくのかな。

 

青木の笑顔が浮かんだ。

俺の、美和ちゃん。

 

メジャー路線か。

がんばってみるよ、やれるだけ。

そんな歌、あったな。