‐‐‐‐‐‐‐帰り道‐‐‐‐‐‐‐

 

校門を出て、暫く歩く道筋で自然と手を繋いだ。

 

「びっくりした」

 

歩きながら、青木が呟いた。

 

「何が?」

 

「ショー、来ないと思った」

 

「なんで」

 

「だって次、長谷部さんたちのライブだし」

 

「関係ねーよ」

 

言いながら、もう少しだけ時間があったら観たかった、という想いがぶり返した。

 

「……」

 

「なんだよ」

 

「フフフ」

 

「約束したろ」

 

「うん、ありがとう」

 

「こっちこそ、今日は早く帰りたかったろ?観に来てくれてサンキュ」

 

「ううん。ショー、カッコ良かったよ」

 

「ハハッ、3Sの方が。俺ら、うるさいだけで」

 

「そんなことない。きみしろ、すごく良かった。女子ウケとか、そういうの要らない」

 

見上げてくる、真っ直ぐな瞳。

おっと…。

 

「耳、ダイジョブか」

 

「大丈夫」

 

「ホントか?」

 

「ホントは、ちょっとダメージ。こっち側」

 

左手で右耳を指差し、微笑む。

 

「わるい」

 

「全然」

 

「ちゃんと聴こえる?」

 

立ち止まり、青木の両耳を掌で柔らかく覆いながら向き合い、見つめあった。

 

「ショーの声は、聴こえるよ」

 

言いながら、静かに目を閉じる青木。

 

ええっと、コレって、キスするタイミング?

住宅街から大通りに出る前で、幸い周りに人影はない。

 

 

決めた。

この子と、生きていく。

愛想をつかされるその日まで、俺の気持ちの全てで、守ると誓う。

 

胸の鼓動が半端ない。

16ビート、いや、もっとか。青木も?

 

微かに震える睫毛を見つめながら、頭を掌で支えると、気持ちこちらに身体を預けてくれた感触が有った。

 

頬を片手で軽く包み、僅かに屈んで、キスをした。