‐‐‐‐‐‐‐3Sライブ①‐‐‐‐‐‐‐

 

サワちゃんがスネアをチェックした音で、ハッと我に返った。キレが半端ない。あの子、いつも自分でヘッドのチューニングするもんな。普段はおっとりしていて、どっちかっていうとトロいのに、ドラムになると入るスイッチ。

 

「もー無理ー」

「押さないで」

 

前列に陣取った女子の間で、場所をめぐって小競り合い。

 

「あっ、そこ危ねぇ!あんまり押さないで。大丈夫?」

 

椎名が心配して声がけしてる。

 

「マズイな」

「やっぱ会場整理必要?」

 

きみしろ四人揃って動きかけたところで、

 

「先輩、これ以上人を入れたら危険。閉めてもらえますか」

 

佐久間が声を掛け、「全体的にちょっとだけ下がってー」と仕切り始めたので、モメかけた女子の一群も素直に従った。流石のボス猿感、響く低音。リーダーの資質として、声って重要だ。

 

佐久間、カッコいいなー。

やっぱ身長高いとギターが映える。はだけたシャツの胸元から漂う色気。同じ学年でなんでこうも違うんだろうか。

 

相変わらずかわいいな、人たらし椎名。ファンの女子から絶え間なく名を呼ばれ、絶妙なタイミングで微笑み返し。アイツが「カワイイ」を全開にしたら、間違いなく先輩方の女子票全部持ってかれる。ただでさえ上手いのに、ハンデ半端ない。

 

俺もたまに言われる、顔立ちに子供の頃の面影を残した童顔の「カワイイ」と、椎名のソレは違う。ある種中性的な、睫毛や肌や顔の小ささとか、女子が羨ましがるやつ。間近で見た時のツルピカ肌を思い出した。アイツでもヒゲって生えんのかな。

 

椎名と佐久間が向き合って、試技で軽く今日の曲のコードを奏でた途端、待ちきれない観衆から黄色い声が上がった。

まさに、黄色。