‐‐‐‐‐‐‐きみしろライブ②‐‐‐‐‐‐‐
うねるベース、とち狂ったギター、アドリブ合戦の様相を呈しかけたところで、打合せ通りドラムの合図でエンディング!
ウォーと歓声が上り、予想以上の手応えと共に一曲目を終えた。アッチー、ヤバイ。
「エー、マキシマムザホルモンの、『恋のメガラバ』でした!もう1曲、ホルモンのハードコアなやつやるんで、けたたましいの苦手な子は今のうちに避難して」
ドッと笑いが起きたが誰も下がらない。オイ、マジだってのに。
「ショー、行くぞ」
額の汗を拭いながら、普段穏やかなカッキーの眼が一際獰猛な光を宿した。
(オッケー!)
叫ぶ。
「爪爪爪!」
♪爪爪爪
マキシマム ザ ホルモン(2008)
地雷炸裂!
歌と言うより最早、咆哮に近い。
俺の声質だとちょっとエグみが足りず、全力でやると後で喋れなくなるから5割セーブ気味に、でも出来るだけオリジナルに近づけたい。メチャクチャ弾いてるように見えるが、ダブルギターでリズム隊としっかりキメを合わす。前列の野郎共は皆、狂喜乱舞ではっちゃけてるが、女子は、やっぱ引いてるか。しゃーない。
青木ー、無事かー。目が合ったら頷いてくれた。
山口のやつ、なんかめっちゃゲラゲラ笑ってる。カオリンは、困ったような笑みを浮かべてる。
途中でハイスピードの車から飛び降りたかのように浮遊感のあるメロディアスでスローなフレーズが唐突に入るが、直ぐにまた飛び乗って地獄のドライブ。あー、もう少しマイク下げれば良かった。つか、先輩アゲてねーか?
シャウトを続けた影響で酸欠、目の前が白くなる。手元を見て、小さなレモン色のピックで無理矢理気を取り直す。
疾走、反転、疾走、疾走ー。
四人で呼吸を合わせて、ジャ!とエンディングに辿り着き、曲が終わった。
歓声。
主に野太い声の、歓声。
野郎共はめっちゃ盛り上がってるが、女子はやっぱ引いてるー、無理もない。
汗、汗、汗ー、ヤバイ。
元々汗っかきだけど、足元に池ができそうだ。
「みんな、ありがとう!ちょっと誰かモップ貸して」
またドッと笑いが起きたが、気にしない。メンバー皆の表情に浮かぶ達成感、サイコー!