‐‐‐‐‐‐‐PA‐‐‐‐‐‐‐

「吉田先輩、今日よかったらPAやらせて下さい」

「いや、いいよ。槙田お前、演者だろ。2番目?」

「ハイ、自分ら出るとこ以外はやれるんで」

顧問の中田っチの見よう見まねで始めて、基本を教わったから操作はフツーに出来るし、耳だけはいいから客席で聴こえるバランスの調整にはわりと自信がある。俺らの前後の静かなバンドと振り幅が大きいから、少しでも客席に負担がないように、上手く加減したい。

「珍しいヤツだなぁ、結構面倒だぞ。わかった。きみしろん時は、俺ら3年でやるから」

「ありがとうございます」

放課後の限られた時間だから、全バンドでリハする時間はない。トップバッターの「中川薬局」に音を出してもらい、調整開始。
ペチャクチャ喋って中々指示通りに音をくれない。知らんぞ、もー。ようやくゲットして聴くと、ヴォーカルと比べて弦楽器の音がややデカい。

マイク音量調整のため、ゆっくりとフェーダーを上げながらハウリングするポイントを探る。あー、面白い。こういうのも性に合ってるな。

「ショー、来たぞ」

声を掛けたクラスの仲間や、他クラスの中学からのダチがメッチャ笑顔で入口から覗いている。どちらかというと女子多目の軽音に堂々と入れる口実、俺らの応援。

「おう、あと20分で開場するから」

開場(笑)。ライブハウスかよ。ライブハウス視聴覚室へようこそ!

青木、来れるかな。気になって入口をチェックしていたら、前田と伊東と一緒に来てくれた。良かった。

「ショー、来たよー」

手を振って、ニッコリ微笑む俺の好きな子。大勢いても青木のいるところだけ、なにか柔らかい光に包まれている感じ。良かったー、本当に。

「ありがとう」

青木と二人に、笑みを返した。





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