‐‐‐‐‐‐‐探しもの‐‐‐‐‐‐‐

大事なものをなくしたときの、見つかるまでの焦り、絶望感、自分への苛立ち。ADHDの自分は、今まで幾度も感じてきた。不甲斐なさで焼けつくような、苦しい思い。

見つかった時の、この上ない幸福感。何かに許されたような圧倒的な安堵の波に包まれる感じ。その、今までで一番デカいやつを全身に感じながら、学校へ向かう小田急線に乗った。

コレってきっと、マトモな奴にはわからない種類の幸せ。ADHDならでは、じゃないかな。

幸福感に包まれながら寝過ごす危険を回避するため、空いた車内のドア横のスペースに立った。

ありがとう、神様。
神様としか呼び方のわからない、見えない何か。
あの子に、逢わせてくれたこと。なくしかけて、今また、一緒にいられること。

学校に着いて、先ず職員室に直行、先生の制止を振り切って捜索しに行ったことを謝り、青木が行方不明になった経緯を説明した。
怒られたが、比較的短時間で「発見」出来たこともあり、お咎めなく、クラスに戻ったときには、なんかよくわからない拍手で迎えられた。

時間差で青木が到着、先生と皆に謝ったが、皆の反応は温かだった。

「いーじゃん二人」

「よかったね」

「みわっちー、心配した!」

青木と疎遠だった俺の「ファン」の、伊東と前田とも仲直り出来たようで、よかった。

「オイ、ショー。付き合ってたんなら、そう言えよ。水クセー」

ヒデに突っ込まれ、言葉に詰まった。まだ付き合ってねーけど。

「血相変えて飛び出して行くからマジでビビった」

仕方ない、他にどうしようもなかったんだ。

「そういうことなんだ」

説明は厄介だから、そのままスルー。

なっ?

少し離れて前田と抱き合う青木に視線を送ると、微笑んで小さく頷いてくれた。

青木ー。
美和ちゃん。


なってくれるかな。
俺の、彼女。





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