‐‐‐‐‐‐‐声‐‐‐‐‐‐‐

声が、どこからか聞こえた気がした。

響きの柔らかい、あの声。

周囲を見渡す。
そんなわけねーか。

「もー離さないからねー絶対」

耳だけは抜群に良い俺。
絶対空耳じゃない。
青木?

立ち上がって声の方向に向き直ると、青木が角を曲がって来るのが、見えた。
いたー!

「ショー、どうして?」

汗びっしょりで、胸にマメを抱きかかえている。

無事だ。
無事だった、神様!

「…………!」

駆け寄って、豆柴ごとハグした。

「よかった…」

胸の鼓動が半端ない。
マメが、伸び上がってクンクン鼻を鳴らした。

「ショー?」

抱き締めた身体が、熱い。

身体を離して、問いかけた。

「どこ行ってたんだよ」

「ショー、なんでここにいるの?」

「探しに来た。行方不明で騒ぎになってるぞ、なんで電話出ないんだよ」

「ウソー!どうしよ。スマホ忘れちゃって、いつもは諦めるんだけど、今日はショーのライブだし」

「家に?」

「そう。戻って玄関開けたらマメが飛び出してきて、前にもあったの、おかーさんのケージサークル閉め忘れ。なかなか捕まえられなくて…めっちゃ走った」

はー、、、
全身の力が抜けた。

もやがかかったような周りの景色がクリアになり、夢から醒めたように、急に周囲の音がはっきり聞こえはじめた。





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