‐‐‐‐‐‐‐不安‐‐‐‐‐‐‐

「ショー!」

ヒデの呼ぶ声がしたが、振り返る余裕はなかった。

どうしたんだ、どうしたんだよーー、青木ーー。何か、あったのか。

こんな時に限ってバスもタクシーも通らない。いつの日か、ヒデとハマーと競争した道を逆に、ひた走る。

喪失感。
どれだけ好きかは、失った時の辛さでわかる。こんな時に、徹兄貴の言葉が頭をよぎる。縁起でもねぇ。

そんなのわかってる。
青木のいない今の情況が、とんでもなく辛い。

なんで、なんでだ。
学校すっぽかすような子じゃないんだ。
誰か、通り魔?そういえば、5月の登戸の事件も、朝だった。模倣犯?

くっそ、こないだ、気にかかってたじゃないか。既にフラグは立っていた。独りで帰らせるの、心配だって。

バカ俺!
昨日青木が朝一緒に行こうって誘ってくれたじゃないか!フラグ二つ目!

段差に躓いて、危うく転びそうになり、踏ん張って回避した弾みで、右肩に掛けたリュックを地面に落とした。勢いで開いたのか閉めずに来てしまったのか、新しいタオルにくるんだ青木へのプレゼントが、中から転がり落ちて、拾い上げる自分の手が震えているのに気づく。

頼むよ、青木。誕生日じゃないか。いなくなんなよー。

「変だと思ったことはないかも」

「それが、ショーの過ごし方なんだよね」

かけてくれた言葉が、胸をよぎる。全部受けとめてくれた、俺の変なところ。

駅に着いて、電話をかけるが、やっぱり出ないし、既読にならない。

電話に出られない状況って…、何だよ。拉致された?





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