‐‐‐‐‐‐‐ホームルーム‐‐‐‐‐‐‐

「おっと、もう8時15分!」

「急げ!」

大慌てで機材を片付け、カッキー達と別れ、ヒデと二人、8:30のホームルームに滑り込んだ。

「バカ、ショー!前から入んなよ」

出欠を取り始めた田中先生とバッチリ目が合い、皆に笑われた。

「コラ、二人!『ま行』だからまだセーフ。早く座って」

「ハイ」

どうにか席に着いて、「『あ行』だったらアウトだったな」と、ヒデと顔を見合わせ笑い、ふと気づいた。

『あ行』のあの子がいない。青木、休み?

出欠を取り終えた先生が、

「青木さん、連絡ないんだけど、誰か聞いてる?」

後ろからヒデが小突いてきた。

「どうしたよ」

「わからん、聞いてない」

言いながら、なんか冷たい汗が背中を流れた。
どうしたんだろう。昨日のLINEの感じだと、元気そうだったけど。

先生のスマホが鳴った。

「ハイ、田中です。あー、すみません、お仕事中」

青木ママか。

「え?」

先生が顔を上げ、髪をかきあげて俺達生徒を見た。その瞬間、どす黒い嫌な予感で、胸の鼓動が速くなった。
何か、あったんだ、青木に。
勢いで立ち上り、気付けば教壇まで来ていた。

「何すか?教えて下さい」

「今朝は、弟さんの送迎で、お母様より早く出てるって」

ざわつく教室の中で、頭からサッと血が下がった。しゅうくんと二人?

「あっ、ハイ、ハイ、そうですか。わかりました。保育園には行っているんですね」

「センセー、みわっち、じゃない、青木さん、今朝からLINE既読になんないです」

青木と仲の良い女子の誰かが、スマホを掲げた。

「ん、わかった。スマホ仕舞って」

ちょっと学年主任の先生と相談してくる、と廊下に出た先生を追って、

「先生、俺ちょっと行ってきていいですか?家知ってるし、行きそうなとこわかるんで」

わかんねーけど、こんな状態で授業なんて聞いてらんねぇ。

「槙田くん、ちょっと待って。今からお母様がお家に戻られるから、必要があれば警察に」

「待てません」

教室に戻ってリュックを掴むと、昇降口に向かって廊下を走った。





にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(ラブコメ)へ
にほんブログ村