‐‐‐‐‐‐‐ため息‐‐‐‐‐‐‐

とりあえず、止まって良かった。なし崩しにカップルになるのは、なんだかイヤだ。

全然脈なしなのに、なんでカオリンにこだわる?コクったところで、撃沈、必至。何せ、好みのタイプが佐久間じゃあ、望み薄。

「ハァァ」
小さくついたため息を、青木に聞かれた。

「困らせちゃってる?ショーのこと」

「いや、青木のせいじゃない」

俺が優柔不断で、ヘタレなせい。

駅に着き、改札階に上がるエスカレーターの手前で、クラスの女子2名に、会った。

「おーい、ミワっち!」
「Yeah!槙田」

親指を立てて、冷やかしてくる。今まで、二人でいても特に反応無かったのに、周りからはなんか有るように見えるんだろうか。

有ったじゃん!
キスこそしなかったけど、何回ハグしたよ、俺。

そういう二人がまとう雰囲気って、特に女子は敏感な気がする。こうやってどんどん、既成事実が増えていく。

「練習、大丈夫なの?」

「ああ、明日と明後日スタジオ入って通しでやるから。普段からやってる曲だし、大丈夫」

「ライブ、楽しみ」

「耳栓、忘れんなよ」
マジで爆音だから、鼓膜ヤバいかも。

バイバイ、と手を振る改札。反対側だから、普段はここでお別れか。

帰り道、青木の降りる駅の隣の登戸で5月に通り魔事件があったのを思い出し、ネットニュースで検索すると、つい最近も5ちゃんねるに模倣犯が犯行予告を出してるのがわかった。

イヤだな、こういうの。
朝、家族が普通に出掛けて、二度と家に帰ってこないなんて。考えただけで、ゾッとする。

青木と少し似た雰囲気の朗らかなお母さんと、腕白でかわいいしゅうくん、おとなしい豆柴のマメ。お父さんは会ったことないけど、きっと優しくて…愛情いっぱいの家庭で育ったんだろうな。

どう思われてもいいから、送っていけば良かった。こんなに心配になるってことは、俺にとって青木ってもう、ただの友達じゃない、「特別」なんだ。




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