‐‐‐‐‐‐‐帰り道⑪‐‐‐‐‐‐‐

「思い出作りのために、今日デートしたわけじゃない」

「じゃあ?」

「青木が、どんな子なのか、知りたかったんだ。なんで俺に興味持ってくれたのか、とか」

「なんでか、わかった?」

「よー、わからん。でも、俺のこと、わかろうとしてくれてるのは、わかった」

「あっ、ゴメン」

青木のスマホが、鳴った。
ヤバい、もうすぐ10時だ。

「うん、うん、大丈夫。もう家の近く。駅まで送ってもらったの」

笑顔で応える青木。そんなに怒られてはいない?

「ゴメン、ショー。もう家に入らなきゃ」

「スマン、遅くなっちまった。やっぱり挨拶しようか」

「いいよ!おかーさん出てきたら余韻が台無し(笑)。続きはまた、いつか」

「ライブ、観に来て。良かったらその日、一緒に帰ろう」

「うん!ありがとう」

パッと顔が明るくなった。一瞬肩に手を掛けてきて、頬にキスしてくれた唇の、柔らかい感触。うわっ、こういうの、マジ照れる…!

手を振って玄関に入っていく青木。最後に振り返り、微笑んでくれた。

話を合わせるため、俺も青木家の前から、立ち去った。

駅へ向かう道。ポケットの中で、繋いでいた手の感触を、思い返していた。

この、淋しさ。
これってやっぱ、恋なんかな。



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