‐‐‐‐‐‐‐街角ピアノ⑩‐‐‐‐‐‐‐

「前に、私の他にもクラスにファンがいるって言ったよね、二人ともショーのピアノ聴いてからなの」

「マジで?」
そうだよな、俺のギャップって、ピアノくらいしかない。

「一番ピアノから遠いイメージだったから衝撃で」

「俺ってそんなにガラ悪い?」

「アハハハハ」

本多に、女子の気を惹こうとしてピアノ弾いてるみたいに言われたのを思い出した。クッソ、そんなんじゃねーぞ。

「青木、ありがとう。おかげで、なんかすごい人と知り合えた」

「私も、見てて嬉しかった。ショーって、やっぱり普通じゃないよ」

「変?」

「もう」
ぺしっ、と腕をはたかれた。

「私なんて、絵が下手だから音楽クラスに入ったような、音楽のことよくわかってないヒトだけど、ショーが特別なのは、わかった」

「もう、いいよ。照れる」

「ホントだよ。聴いてる人たちの顔、見せたかった」

褒められ慣れてないから、ひたすら打ち消したけど、俺も嬉しかった。パンク小僧の拙いピアノに足を止めてくれた、沢山の人たち。

「さて、今何時だろう。へっ!もう7時?」

「夢中で、わかんなかったね」
微笑む、青木。

「どうしよう。腹減ってる?」

「まだ、あんまり」

「遅くなるといけないから、登戸あたりまで戻ろうか」

「いけない?」

「危ないし、もし電車が止まったら帰れなくなる」

「心配症(笑)。いいよ、ショーに任せる」

「見たい店とか、大丈夫?」

「あっ、じゃあ、この地下街、ちょっとだけ」

少し歩いて、アクセサリーや小物のショップを見て廻った。チマチマ、キラキラした儚い光を放つ、飾りたち。

どういうのが好きなんだろう。
青木が手に取るものを、そっと観察した。