‐‐‐‐‐‐‐くのー‐‐‐‐‐‐‐

さすがバスケ部、すばしっこいな。よし、本気出すか。

「そんなに簡単に捕まってたまるかー!」

叫びながら急に向きをしなやかに変え、届きそうで届かない。手強い!相当運動神経いいな。

「ミワちゃんガンバレー!」

「おー!」

さっきまで座っていたベンチを走りながら軽々飛び越えるジャンプ力。オイオイ、忍者かよ(笑)。この場合は「くの一」か。

もはや「逃走中」のハンターの気分。いつの間にか結んだ、揺れるポニーテールを追い掛ける。障害物がなくなって、よし、直線勝負!

「あはははー、もうダメだぁ」

笑いだして脚がもつれたのか、一瞬つんのめって視界から消えかかった。

ダメだ、怪我させたくない!膝から崩れかかる肩をとっさに掴み、支えて、体を反転させ、地面と青木の間に滑り込んだ。

ズザザザザザザザー!
勢い、スゴ。
俺の身体は、青木の敷物と化した。

「イッテ…おま、張り切りすぎやろ」

「うわーゴメン!」
半身を起こしかけて振り返った勢いで、馬のシッポの穂先で頬をピシリと撫でられる。

や…わ…ら…か。
仲間とのプロレス遊びとは違う、女子のお尻の感触に動揺する。コレって、このままじゃヤバイやつ。

「下りろよ、重た!」

「もう!」

ピタン、と俺の脛を叩いたが、マーフィーの法則でこういう時叩かれるのはきまって痛い方。

「うっ」

「あっ、ゴメン、怪我した方だった?」

「大丈夫」

じわん、と来る痛みが治まるのを待って、立ち上がると、青木が土埃を払ってくれた。

「汚れちゃったね」

「下、ジーンズだし、上は上着羽織れば平気。怪我しなかった?」

「おかげさまで。支えてくれなかったら顔からいってたかも。ありがとう」

「よかった」
とにかく今日の第一目標は、青木を無事に帰すこと。