‐‐‐‐‐‐‐ボス感‐‐‐‐‐‐‐

「なんかムカッときて、闘うはめに。だってアイツ…、卑怯だ」

「本多?そういうヤツだよ。自分の手は汚さない。なに、女がらみ?」

「まぁ、そんなとこ」

「お前、かわいい顔してなかなかだな」

アハッハッハッハー!

かわいい?クソ、確かに近所のオバチャンらに童顔だと言われるが。
すぐツボるヤツだな。でも俺も、だんだん楽しくなってきた。

「あっ、警察は?」

「そんなん、嘘に決まってんだろ」

ニヤッと笑う。

「でも、住所」

「その辺の自販機見れば、大抵載ってるよ」

「いつから見てた?」

「お前の、『死んでも出すか、クソが!』から。お前、声良く通るな。ヴォーカル?」

頷いた。
そして、驚いた。
知り合いかどうかもわからずに、助けてくれたんだ。
5人を相手に怯まない度胸。機転の利く頭の良さ。奴らを恫喝し、蹴散らした声の迫力。

なんか、スゲー、こいつ。

単なる女たらしだけじゃない。
なんというか、群れのボス感、半端ない。

「マジで、助かった。サンキュー」

「いいよ、それより手は、大丈夫か?」

「腹の下に隠したとき、指を少し捻ったけどオッケー」

「咄嗟に守るなんてやるじゃん。ギターだよな」

「ああ」

佐久間が来なかったら、多分全部ダメになってた。

俺の唯一の取り柄の音楽も、夢も。

「行くか」

「ん」

促されて、一緒に空地を出た。