‐‐‐‐‐‐‐好きの魔法‐‐‐‐‐‐‐
「ショー、ごちそうさま。楽しかった」
待ち合わせた時より、元気になってよかった。
「俺でよかったら、いつでも話聞くよ」
「ありがとう。でも、あんまり期待させないで」
ばいばい、と笑顔で手を振る改札。
話し込んで少し遅くなったから、本当は家の近くまで送っていきたかった。
でもそれって思わせぶりか?
無事帰れたか確認したいだけの、俺の自己満足?
考えがまとまらないうちに、青木は俺と反対側のホームに手を振りながら降りて行ってしまった。
あぁ、ヘタレ!こういう時、例えば佐久間だったら、逡巡する間もなく、送っていくんだろうな。息するように自然に、女子をエスコート、か。
どう思われたいか、よりも、自分がどうしたいか。
考えすぎると、ややこしくなる。自分の思いに、従おう、…次回から。ごめん、青木。
いい子だよな。明るくて、かわいくて、素直で、構ってちゃんじゃないし、一緒にいて、すげー楽。
でもそれは、青木が俺を好きで、気を遣ってくれているからなのかもしれない。
「好き」ってすごいな。
なんでだよ。俺みたいな変なやつ。
俺が理屈っぽいのも、多分俺は、発達障害のうちのどれか、おそらくADHDで、自分を知りたくて、たくさん本を読んだから。
突出して得意なこともあるけど、人が普通に出来ることが、とても苦手だったり苦痛だったりする。
周りに迷惑をかけたくなくて、年々少しずつ「普通」に近づけるよう努力してきたけれど、やっぱり長い時間集中するのは苦手だし、何かの作業をするときも、ひとつだけだと気持ちが保たなくて、他の事を間に挟んでやったり、人には説明が難しい、何か自分にしかわからない、変なところがいっぱいある。
自分はきっと王道な人生は歩めない。予め決められたタスクを、確実に成し遂げるリーマンみたいなの、絶対、無理。
好きなこと、得意なことを生かして、何でもいいから人の役に立てることを探していかないと。
傍流、「Going Underground」が、きっと俺の人生。
誰にも打ち明けられない孤独。
でも「好き」って、それでもいいんだよって、包み込まれるような、気持ちになる。
「好き」って不思議。
サンキュー、青木。