‐‐‐‐‐‐‐フェロモン‐‐‐‐‐‐‐

「ホントに来た!」

「バド部辞めたってこと?」

「ギター、弾けんの?」

ミーティングから出てきた佐久間に、SASAMIのメンバー他、軽音の女子が絡む。

中学の頃から人気という噂は運動部の仲間から聞いていたが、佐久間を囲む女子皆が、なんかテンションアゲアゲで楽しそうだ。

俺の、推しのカオリンは、普段通りクールな反応だったが、沸立つ仲間の姿に、微笑みを浮かべていた。

「よろしく。この二人と組むんで」

と、椎名と臼井ちゃんを指すと、キャーと歓声が上がった。

山口が言ってた「女子がザワつく奴が増える」って、コレか。山口に視線を送ると目が合い、「それな」と、唇の形で返してきた。

軽音は音楽選択クラスの子が多いから、椎名と同じ美術選択の佐久間は、普段接する機会が殆どないはずなのに、すごく会話が弾んでいる。女子が喜ぶ軽口を叩き、笑わせて、人気があるというのも、頷けた。

見た目はそこそこで椎名ほど美形じゃないが、低音でよく通る声と、おそらく180cm超え背丈の、映える立ち姿。人好きのする明るい笑顔に、モテ・オーラが漂っていた。

「話術!勉強になるなぁ」

感心したように途中から来たカッキーが呟いた。

「アイツもサワちゃんを呼び捨てにするのかな」

ヒデの顔が曇った。

呼び捨てか。やっぱ瞬時に距離を詰められる奴らって、いるんだよな。

佐久間を囲む女子たちの話し口調は軽快でフレンドリーだったが、普段俺らと話すときとは違う「よそゆき」なニュアンスがあった。媚びまでいかないけど、それに近いやつ。
これがいわゆるフェロモンなんだろうか。

「変なフェロモン出てる」

佐久間と同じ中学の平野が前言ってたな。平野の表情を見ると「やってんな~」と言いたげで、なんか可笑しくなって、俺も吹いてしまった。

椎名とはまた違った雰囲気の色気。
そういうのってやっぱり女子は、敏感だ。