‐‐‐‐‐‐‐佐久間雄大‐‐‐‐‐‐‐
一緒に帰ったあの日に、臼井ちゃんと椎名はバンドを組んだらしく、二人組ユニットになるのではないかと気が気でないヒデは、臼井ちゃんが部活に向かうタイミングに合わせて俺と一緒に出掛け、道中の短い間、話すのを楽しみにしているようだった。
結局あれから一緒に帰るのは実現していないけど、彼女と話して生き生きしたヒデを見るのは、嬉しかった。
部室に着くと、珍しく椎名がもう来ていた。その隣に、見掛けない奴がひとり。
あれ?バドミントン部の佐久間じゃないか。
「サワ!おつかれ。LINEで話したギターの佐久間。中学の時に組んでたんだ」
椎名の隣でゆったりとソファに掛けてた佐久間が、立ち上がった。うっ、デカい。
「臼井さんだよね、佐久間です。よろしく」
と言ったあと、俺らにも
「よろしく。世話になります」
と、挨拶してくれた。
臼井ちゃんはペコリと会釈して、
「よろしく、臼井佐和です。バドミントンから変身?じゃないや、転部?」
オイ、天然。
「ああ、チェンジ。コイツがどうしてもって誘うからさ」
「ちが!来たくて来たんだろ」
あっはははははは。
楽しそうな3人はその後、部長がまだ来ていないVIPルームに籠って、ミーティングを始めた。
「翔、聞いたか今の」
ヒデが、呟いた。
「ああ、バド部からチェンジ?」
「そっちじゃねーよ。名前」
「佐久間?」
ぶんぶん頭を振るヒデ。
「椎名のやつ、もうサワちゃんを呼び捨てに」
そっちか!
確かに、ヤりたいです事件からそんなに経っていないのに、もうあの親密感は、さすがだ。
人たらし、恐るべし。