‐‐‐‐‐‐‐始動‐‐‐‐‐‐‐
『きみとしろみ』
バンド名が決まると、それまでダラダラなんとなく個人練習ばっかりやっていたのが、俄然皆のやる気が湧いて、部活の練習だけでは飽きたらず、校外で練習出来るスタジオに四人で入会し、それぞれ持ち寄ったバンド譜でレパートリーを増やしていった。
「意外に金掛かるな」
「でもさすが、学校より全然機材がいい」
やっぱり専門のところでやると、学校の練習では、物足りない。
パンクをやろうと始めたが、とくにジャンルに拘らず、カッキーとハマーの好きなBUMP OF CHICKENやRADWIMPSのコピーもやった。
「翔の声、パンクだけじゃ勿体なくね?もっと女子受けする曲、歌えるじゃん」
カッキーに言われたが、どうも恋愛にまつわる歌詞は、恥ずかしくて出来れば避けたい。俺がパンクやろうと思ったのって、それもデカイかも。
部活で1年が使える練習室は、基本先着予約順だが、楽器初心者が多い女子だけのグループには、なるべく譲るようにしていた。不慣れだと音を出すまでのセッティングに時間が掛かってしまい、決められた1時間はあっという間。俺らは基本早めに入って、待ちのバンドに途中から譲ることも度々あった。
人数が多く、締め付けが厳しくない分、メンバーが常に全員揃って熱心に練習するバンドは、そんなに多くは、なかった。
俺とカッキーの推し(カオリンと平野)がいるSASAMIは、女子バンドの中でも一番熱心で、必ず誰かは部室に来ていて、待ちの間も譜面を見て曲の構成を確認したり、アンプに通さず弾いたりしていた。
元々ルックスの良い陽キャの3人(山口、清水、平野)が並んで歩くと壮観だったが、そこにスタイル抜群の長谷部香織が加わったことで、華やかさが、増した。
「眩しい…オレの推し、平野真侑ちゃん」
カッキーが呟く。
「平野と清水ってカレシいるって聞いたけど」
と、バッサリ、ハマー。
「おぉぉ、マジで?」
しょげる、カッキー。
山口も、時間の問題だよな。
やっぱ、いい子はどんどん決まっていく。
俺の推しのカオリンは、どういうタイプが好きなんだろう?