幼なじみって、いいな。
こぼしたとこ、もらしたとこ、大泣きしたとこ、お互い色々見られてるから、カッコつけなくていい。カッコのつけようがない。らくちん。

サイトーは運動神経抜群で、リレーのアンカーもぶっちぎりで、小学校の頃まではけっこうモテてたのに、硬派なの?何なの?
女子にあんまり愛想がないから、全然発展しなかった。佐久間のチャラさの10分の1でもあったらかなり違うのに。話すと結構面白いのにな。女子ウケに無頓着なとことか、ウチはわりと好きだけど。女子ウケしか考えてないようなメンズとばかり付き合ってきたウチは、思った。

「片付け、手伝ってくれてありがとね、めっちゃ早く終わった」

「ドラムって解体すんの結構手間だな」

「その分、集まるときスティックしか要らないから、楽だよ」
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華奢な体に重たいベースを背負って、笑顔で帰って行った由依を思った。

「てか、平野、なんであんなに号泣?」

「ライブ見たでしょ?シーナくんの目線。ドラムばっか気にして…この頃よく二人一緒に帰ってるし…もーダメかも。思ったら泣けてきた」

やっぱ、ダメージがジワジワ来たんだなぁ。

「二人で帰るとこ、見たことある?すっごい嬉しそーなの、シーナくんが」

「あぁ、見たよ」

気のせいか、サイトーもちょっと表情が曇った。やっぱマジじゃん。

「好きになるとさぁ」

「うん」

「相手の言葉を、何十通りにも解釈して、結果、いい方に考えちゃうんだよね」

結局勘違いだったんだけど。

「それはお前だけじゃね?」

「そっかなぁ」

そうかも。優しいのは、ウチに対してだけじゃなかった。やっぱ罪作り、人たらし。

「いっぱい話聞いてくれたし、結構脈あり?って思ってたから、キツい」

「オレは、悲観的だから、脈なしと思ったら直ぐ定位置に戻るよ」

「定位置って(笑)」

「浮かれたステージから下りて、身の程わきまえるっていうか」

何なに?なんでそんなに自己評価ひっくいワケ?