そう、好きな人って、特別なんだ。
他では替えがきかない。だから、ムキになるし、メロメロになるし、なんでも許せちゃう。

アヤが、普段は苦手なロン毛の先輩をカッコいいと言ったり、女たらしの佐久間が、全然モーションかけられなかったり。

ウチだって、いつもはカラオケの時ぐらいしか気にしない歌詞を、わざわざ調べて分析してみたり。

その人のこと、なんでもかんでも知りたいのだ。近づきたいの、少しでも。

恋って、病気。このドキドキは、病気が治らない限り、続くんだ。

辛いけど、苦しいけど、相手の気持ちが解らない分、自分の中で完結する妄想。

「片想いっていいな」

佐久間の呟きに共感しつつも、出来ることなら両想いになりたいな。ああ、神様、ニャーム。



☆ライバルたち☆

ライブ前日、くじ引きに負けて、ドラムのある練習室を中川薬局に取られてしまった。へーんなバンド名。まぁ、ウチらのSASAMIも変だけど。

薬局のボーカル&ベースの二人は、以前ウチに調子のんなって言ってきたコンビ。
無理っしょ。シーナくんと登校出来たら、調子乗るっしょ、そりゃあ。アンタらも彼と登校のとき、めっちゃはしゃいでたやん。

後夜祭に出られるのは選ばれた1バンドだけど、次点になれば、当日何かトラブルがあったときの補欠になれる。3Sには負けても納得だけど、薬局には絶対負けたくなぁい!

「SASAMIにだけは負けないから」

なんかまた睨んできたけど、笑顔で丁寧に、無視。女子間で揉めるのはまっぴらごめん。
もしまたサワちんを苛めたら、SASAMI全員で、薬局閉店まで闘うからね。