☆練習と待ちぶせ☆

…マズイ。
寄り添う二人を見たくなくて、部活にいけない日が続いて三日め。さすがに他のメンバーもウチの様子がおかしいのに気付いた。

「ねこ、まだ調子わるいの?」

咎める感じではなく、由依が優しく聞いてきてくれた。

「ん、そろそろ大丈夫。明日から必ず出るから」

「あんまり来ないと、他のドラマー探しちゃうよーん🎵って、アヤが言ってたよ」

「えっ、やだ。それは困る」

シーナくんに近づきたい不純な動機ではじめたけど、確かに育ちつつある、ウチのドラム愛。

「明日は、絶対に行く」

「わかった。今日、一緒に帰ろ?」

いつも優しい由依。ウチ、将来子どもが生まれたら、ゆいってつけようかな、名前。


色々話を聞いてくれて、ささくれた気持ちが癒された。そうだな、失恋でみんなに迷惑かけるなんて情けない。ライブも諦めたくないし、やることはちゃんとやろ!

「どーしよ、ウチのせいで練習遅れちゃったね」

「カオリンが、ドラムマシン持ってきてくれたから大丈夫。お兄ちゃんもバンドやってんだって」

「えー!マジでウチ要らないやん!」

「だから、おいでって(笑)」


駅に着いて、バスから降りた所で、

「マユ、なんかあのイケメンがめっちゃ怖い顔でこっち見てる」

うっ、拓斗がいる!

「由依、そっち見ないで。ウチの元カレ」

「大丈夫?ほっといて」

「平気。このまま上に行こ?」

急いで二人で階段を登りながら、思い出した!
近藤拓斗、コンタクト。
ついに待ちぶせされるようになっちゃった。

由依が一緒で良かった。見栄っ張りでエエカッコしいだから、かわいい女の子の前では修羅場は絶対に避ける。

「明日から、みんなで一緒に帰ろ?」

「うん。ありがと、由依」

仲間がいてくれて、助かる。とにかく、なるべく一人は避けないと。