スティック捌きだけじゃなく、スティックをもつ彼女の手の甲と、腕の内側の白さに、目を奪われた。

しっろ!
色白とかそういうレベルじゃなくて、練乳とかホワイトチョコとか、とにかく白さの次元が違う。アヤのヨッチャン情報だと、宮城出身だから、東北ってやっぱ日照時間が違うのかしら?

顔は日焼け止めをいつもつけてるけど、並んでスティックを持ったウチの手の甲が焦げパンみたいで、引っ込めたくなった。

「えっとね、多分持ち方」

「持ち方へん?」

「そんなにギュッてしっかり持たなくて大丈夫。人差し指と親指だけで、ちょっと軽く持ってみて」

「こう?」

「そうそう。叩くと反動でスティックが上がるよね?それを生かして、先っぽを滑らせるみたいにやってみて」

「なるほど、細かく叩くのとは違うんだ」

タタタタタタタターーーー

パッドの上だからザーとはいかないけど、初めてそれらしく出来た!

「わー、出来た!」

すっごい嬉しい!

「パッドより、スネアヘッドの方が弾むからもっと簡単。すぐ出来るようになるよ」

「ありがとう!」

微笑んだ彼女は、グロスもつけていないのに、血色のいいあかい唇。ぱっちりした目の白目の部分が、子どものように澄んで薄青い。

一緒にいるだけで、嫌なものがでてく、浄化されるようなこの感じ。シーナくんと似てるんだ。

「臼井さんって」

「サワでいいよ」

「サワちゃんって、宮城からきたんだっけ?」

「そう。中二からこっち」

思春期真っ最中やん。

「すぐ慣れた?」

「うん!こっちの人はみんな気さくで優しくて」

「よかった」

「あ、でも1つだけ」

「何?」

「こっちに来たら、鼻毛伸びるの早くてビックリした」

「鼻毛?!」

あはははははは、不意を突かれて笑いがとまんない。

「私ね、小6までコンビニも周りにないような田舎で育ったから、都会の空気に身体が馴染めなかったみたいで」

あははははは、ダメだ、ツボッた。

「慣れるまで毎週鼻毛カットしてたよ、油断するとお母さんに『またバカボンパパなってる』言われて」

苦しい、やめて。ハァハァ(笑)

「今はさすがに普通の速度」

真顔で淡々と話すのが余計におかしい。

「わかった、わかった。でも、川崎って、そんなに都会じゃないし」

「え?都会だよー。電車すぐ来るもん」

なんかもー、やたらかわいい。ちょっと天然の、練乳いちご。好きだなぁ、この子。