やっと繋がった。
平野が見た、サワちゃんの涙もソレか。

「たすくー。サワがいなくなったら、俺…」

いつか、コイツに失恋して涙と鼻水が止まらなかったオレを抱き締めてくれた時のように、オレもシナユーの肩を抱いて、隣に座った。

辛い現実。オレにはどうしてやることもできない。ただ、辛さを一緒に分かち合うだけ。

オレのボロ泣きを思い出して、寄ってくれたのかもしれないな。

オレにとってはライバルの退場という状況だけど、全然嬉しくない!コイツのこんな悲しい顔みたくなかった。

声を上げず、ただ涙が頬を伝うシナユー。格好いいヤツってなんで泣き顔まで美しいんだ?鼻水まみれになった自分を思い出す。副鼻腔炎かなオレ。

「辛いよな。でもまだ決まったわけじゃないんだろ?」

「ああ、でも、最悪に備えて心の準備しておこうと思ったら、泣けてきた」
へへっと、微かに笑った。少し落ち着いたか。

「大丈夫だよ。二人の気持ちがあれば。もし離れても、距離になんて負けねえって」

「そうだな、ありがとう。佑なら、きっと励ましてくれると思った」

「新幹線で二時間?」

「はやぶさなら、二時間かかんない」

「近いじゃん」

笑い合ったが、わかる。毎日当たり前に会える「日常」の中から、相手が消えるのが辛いんだよな。そして、いないのが当たり前になっていくのが。

「何か飲むか?大人なら酒呑むとこだけど、オレんち、三ツ矢サイダーくらいしか常備してねーけど」

「飲む!」

笑顔。いつもの輝きが戻った。
オレの好きな笑顔。

そばにいることで、少しでもコイツが楽になるなら、オレ、ずっとずっと、そばにいる。