でも安心しろ、俺は好きなヤツと一晩一緒でも手を出さなかった男だ。出せなかった、という方が合ってるが。

「わるい。ごちそうになるよ。食べたらソッコー帰るから」

「いいよ、焦んなくても。ママも帰り遅いし」


帰り遅いし
帰り遅いし

オレの中で反響する言葉。
気のせいか、僅かに沈黙。

やっぱマズイよな、早く食べて帰ろう!

「ヤバい、高校生にもなってママって言ってるのバレちった!」

そっちかよ、天然!

「別に変じゃねーだろ」

「そう?でも、友達みんな、言わないよ」

「人前と家じゃ違うかもしれないじゃん」

「そんなうまく切り替えられる?」

「切り替えられない方が、オレは好きだけど」

好きだけど
好きだけど?

何言ってんだ、バカ。
あぁ、ヤバい。
変に意識するやん。

「焼きそば。あったまったよ」

「おし、いただきます」

はやいとこ食べて退散しよう。
さっきから動悸がヤバい。

自分は食べず、頬杖をついてオレを見つめる平野。

「食わないの?」

「うん。見てたい」

「ガン見されると食いづらい」

「うーん」

「?」

「ウチ、好きかも。サイトー」

急いで飲み込もうとした瞬間に言われて、盛大にむせた。

「うへっっ!グェッ!苦しい…」

「ごめんごめん」

「何言い出す急に」

悪戯っぽい笑みを浮かべて、

「へへ、シーナくんの次にだけどね」