学校の近くで、バスから降りた平野とその仲間に会った。

平野がウインクして、親指立ててきた。
髪、そこそこうまく再現出来たかな。

気のせいか女子の視線がニコニコと優しい。
いつもはシナユーと一緒でも、透明人間か?と言うくらい、俺に向けられる視線は無いのに。
やっぱ落ち着かねーな、明日は定位置に戻ろう。



----------------夏休み----------------

今頃何してるかな。

ヤツが宮城に行った8月、喪失感に襲われて、何をする気にもなれなかった。

シナユーのいない神奈川県なんて…、オレ、住んでいたくない。宮城に行きてぇー!

何をしていても気になって、茫然と過ごしていたある日の午後、平野からLINEが入った。

「サイトー」

「なに」

「元気?」

「なワケねーだろ」

「ウチも。今日夜、花火だね」

「ああ」

「行かない?」

「SASAMIの仲間は?」

「街に行くの、誘われたけど、気分じゃなくて」

オレとおんなじ気持ちなんだな。

「行くか、花火」

「うん!」

「待合せどうする」

「登戸?和泉多摩川のが近いんだっけ」

その時一瞬、なぜかあのマシュマロ男の顔が浮かんだ。

「たしか打上開始19時半位だろ。時間遅いし、家まで迎えに行くよ」

「いいよ、そんなん、大丈夫」

「いいって。お前んち駅から遠いし。遅くとも18時半迄には行くから」

「はぁい」