「椎名」

「んっ?ハイ」

と振り向いた顔に、一瞬、誰?と言う疑問符が浮かんだが、すぐに人懐こい笑みに変わった。

「たすくー、何だよ、ビックリした」

「はは」

今更ながら恥ずかしくなってきて、チャラけたスタイリングを後悔した。

「どこのイケメンかと思ったよ」

イケメンがイケメン言うな。

「ちょっと人助けで、変装したらけっこう面白くて」

「ハマってるよ。カッケーじゃん」

オレの乙女心発動!
好きなやつに言われるとなんて嬉しいんだ!

「マジ?」

「佑にお世辞言ってどーする」

平野とおんなじ反応。
あーでも嬉しーうれしー、やり方教わってよかった☆!

「いっそのことずっとコンタクトにしろよ」

「目は無理、オレ、ドライアイだからずっとはキビシい」

「良いなぁ、髪ツンツン立って。身長あるし、きっとモテっぞ」

ニヤニヤと小突いてくる。

女子にモテてもあんまり嬉しくない、今のオレ。人生って、ホントにうまくいかねーな。

「もうすぐ夏休みだな、今年は花火どうする?」

「あー、狛江の?俺その頃、宮城に帰ってると思う」

なんか、顔が、嬉しそう。

そっか、そういうことか。

急速に萎む、オレの乙女心。ぷしゅぅ。

「向こうで会う?」

「ウン。家に行くんだ」

キラキラと笑顔が輝き、金粉が舞ってるんじゃないかと思うくらいのハッピーオーラが。
辛いけど、コイツが幸せで嬉しい。
きっと宮城で、コクるんだろうな。

うまくいってほしい。

自分の想いの成就を願うのが恋なら、何よりも相手の幸せを願うコレって、愛なんだ。
こんな好きになり方は、初めて。
そういう気持ちにさせてくれたのが、オレの場合、なんで親友のコイツなんだろう。

好きに理由なんてない。
好きなもんは好き。
悪いか。

もう余計なことは考えない。
コイツが幸せになるように、全力で応援するまでだ。