でも確かに、並んで歩いててもカップルには見えねぇかもしれないな。平野はどちらかというとギャルっぽいし、オレにはチャラさが圧倒的に足りない。
「ちょっといじらせてくれる?髪とネクタイと、眼鏡と…コンタクトレンズしたことある?」
「部活の練習用に持ってるけど」
「よし!たぶんウチがスタイリングしたらけっこうイケる。元々顔立ちきれいだし、身長あるし」
「だから、気ぃ使うなって」
「言ったでしょ。サイトーにお世辞言ってどーすんのよ(笑)」
渋々だけど、若干興味もあって、駅近くのショップビルのプリクラコーナーに促されるままついて行った。
「ちょっと髪、触るね。屈んでくれる?」
身長差、約20センチ。
中腰になったオレの髪になにやらジェル的なモノを付けて掻き回す平野。
近い!目のやり場に困り、つぶった瞼に、柔らかい指先が触れ、眼鏡を外し、
「眉毛も伸び放題ね」
と、笑う。
「でもウチ、キライじゃないよ。男子であんまり眉いじってるの、好かん」
距離感、ヤバい。家族でもこんなん近いのないわ。
簡易カーテンで仕切られた中で、ポーチから色々取り出す平野のされるがままになりながら、オレは何だか心地好さを感じていた。
「シッポの下がったとこだけカットしようか」
先がカーブしている小さいハサミで、オレの眉尻を整え始めた。
「随分色々持ち歩いてんだな」
「えー?これくらいフツーだし」
アイツは、シナユーはどんな眉してたっけ。オレの部屋で寝入ったときの、長い睫毛を思い出す。眉も、きっと特に修正要らずだな。