「サイトー」

「何?」

「今日いろいろ聞いてくれてありがと。私まだ、シーナくん諦めてないから、よかったらまた話聞いて?」

「オレも、シナユーのこと話したの、平野が初めてだよ」

「安心して!誰にも言わないから。だって気持ち、わかるもん」

孤独から、解放された瞬間。

「ありがとう」

心からの言葉が出た。
聞いてくれて、ここに居てくれて感謝。

コイツなら、信頼できる。 例え、うっかり喋っちまっても、許す。

だって、シナユーを好きなことを、恥じる気持ちは全然ないから。

「じゃあまたね」

「お疲れ」

改札で別れ、笑顔で手を振る平野を見送った。

自分とは全然別世界を生きてると思ってた平野と、こんな話が出来ると思わなかった。

ミーハーで、気が強くって、ワガママで、リア充で。俺の勝手なイメージ。

でも、健気で、弱くって、人の気持ちのわかる、繊細なところを知ってしまった。ついでに諦めのわるいところも(笑)。

シナユーの言う通り、人って、深いな。面白い。

ギャップは恋の始まり?

なんてな!

急いで階段を駆け下り、閉まりかけた小田急線の各駅停車に、飛び乗った。