んっ?でもこないだ、急がないと雄大とサワが二人になっちまう…って慌てて練習に走ってったな。

あの人たらしがヤキモチ焼くなんて、、
やっぱあの子は特別なんだな。はぁぁとタメ息。

目の前で平野が不思議そうな顔。

「おーい、サイトー戻ってこーい」

「いるいる、スマン」

「さっき、キモいなんて言ってゴメン」

「何だよ、急に」

「シーナくん、ウチが男でも、惚れちゃったかも。だって可愛いもん」

「だろ?ちょっとフツーじゃねーんだよ」

「あはは」

いつの間にか泣き止んだな、よかった。

「被害者の会、結成しようか?」

「何だソレ、ダッセ(笑)」

「だってきっと、ファン増えたよ、今日」

「そうだな」

被害者か、ちょっと違うかも。オレの場合、自分がゲイなのかまだよくわからんけど、アイツに対する感情を解析するとそれはやっぱり「恋」で、苦しいけれども、100mでベストタイムが出ちまったり、アイツの存在が生きる希望?になってるのは、確か。

苦しいのも含めて、正に生きてる実感というかなんというか。

「被害者っていうとちょっと違うかなぁ」

平野が、宙を見つめながら呟いた。ん?コイツも同じこと考えてる?

「シーナくんに出逢わなかったら、ドラムこんなに頑張れなかった。会う前と後で、ニンゲン変わったよ、ウチ。マジで」

「言いたいことわかるよ」

「ハァ?そんなに簡単に、見切ったぜ、みたくドヤ顔しないでよ」

「ハッハッハ」


「サイトー、ちょっと待ってて!一緒に帰ろ?」
平野が、すごい勢いで部室の方に駆けていった。