-----------ライブ-----------


「たすくー!」

中間テストが終わって、結果が出て直ぐ、シナユーが駆け寄ってきた。

「数学、俺史上で1番点取れた。ありがとな!」

無邪気にはしゃぐ様子を見ていると、自分のことのように嬉しい。あー、数学得意でよかった~オレ。

「来週、軽音で内輪だけどライブやるんだ、観に来てよ」

「いつ?」

「金曜。1年だけで、5バンドしか出ない。先輩の投票で、後夜祭に出るバンド、選ぶんだ」

「わかった。部活抜けれたら行くよ」

「オッケー、順番最後の方だから、間に合ったら来いよ」

絶対行くー!なんならサボってもいくー!

ステージでピカピカに輝くアイツを観たい。かわいいドラムのあの子とのコラボを見れば、オレのこの不毛な想いも葬れるかも。

オレはただ、シナユーが喜ぶ顔がみたい。
誰より幸せでいてほしい。
そのためなら、なんだって出来る。

ライブ当日、サボる気満々だったが、大会が近くて先輩が厳しく、抜け出すのは難しかった。まだ新入りのオレらには、最後に、金曜日恒例の、二人ずつ走って、タイムの悪い方がチームになって後片付けをやる勝負が待っていた。くじ引きで、運悪く1年で1番速い奴とあたった。負けたら、恐らくライブに間に合わない。


走った。



ひたすら走った。




恐らく、オレの人生で1番速く。手足が、自分のものではないような感覚。ゾーンに入った?





大会の選考会でも出なかった、ベストタイム。
なんだオレ、まだ伸びしろあるな!

恋の、力?


驚く先輩を尻目に、速攻で着替え、どうにか2番目のバンドの終わったところに滑り込んだ。