サイダーでよかった。コーヒーとかウーロン茶だったら悲惨…と慌てて処理するオレを見ながらくっくっと笑って、「その様子じゃあ、ねーな」と、得意気に笑った。憎ったらしい。

「おま、あんのかよ」
聞いたら、

「中学の時、桜井と」

かー!やっぱりな。

「感想は?」

「ん、よかった。女子の唇って、信じられないくらい、やわらかくって」

はぁぁ、どういうリアクションが正解?何故かオレが、赤面。頬が、燃えるように熱い。

「唇の、粘膜が触れ合った瞬間、なんて言ったらいいのか、二人で1つの生き物になったみたいな…」

ぽすっ!

「何すんだよ」

堪えきれず、シナユーの頭にクッションを投げつけた。

「やめれ!聞いてらんねぇ」

「ちょ、待て。まだ続きが、あんだよ」

「刺激が強すぎるっつーの!」

このリア充めが!

構わずシナユーが話を続ける。

「そしたらさ、桜井、なんて言ったと思う?」

「知るかよ」

「『何か、…椎名くん上手。慣れてるね』って」

「初めてだろ?」

「初めてだったんだけど…海外ドラマの見すぎかな、俺も初めてなんだ、って言ったけど、信じてもらえなかった」

「そんなんありかよ」

ヤツは、情けない表情から無理に笑みを作ったが、思いの外、傷ついているように見えた。初キスの余韻に浸る間もなく、遊び人認定?それが本当なら、残酷だ。

「そっから何か、おかしくなって」

桜井の束縛が急に激しくなり、安心させようと努めたが、何せ女子ばっかの部活、誰とも話さないわけにもいかず、いくつかの誤解のあと、「解散」したわけだ。