‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐覚醒‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
月日は流れ、俺とアイツは高校生になった。
進路を選ぶとき、目指す高校が公立の同じ学校だとわかった時の喜び。
二人とも受かって、美術クラス選択でクラスまで一緒になったのには驚いた。やっぱりなんか縁があるんだろうか。
「たすくー、一緒で良かった!心強い」
「オレも」
ドラムが上手くて、吹奏楽部で凄く目立っていたのに、シナユーは高校ではあっさりやめてしまった。
もともとバンドをやりたかったらしく、軽音部に入ったと聞いたが、なぜかベースに転向していた。
「いいドラム見つけたんだ、すっごい上手いの!」
「お前より?」
「もう、断然!」
嬉しそうに語るシナユーをみて、それはもう、よっぽどだな…と、ゴツくて体格のいいドラム野郎を想像していたオレは、その「上手いヤツ」が小柄で華奢な女の子であることに、ひどく驚いた。
おっとりしてシャイで、人当たりよくニコニコと愛嬌があって、でもドラムを叩くと凄い迫力、という噂。 かわいいし、オレからみても、すごくいい子だった。
小さいときから習っていたドラムをあっさり手放すなんて只事じゃない。シナユーも彼女、臼井佐和に惹かれているのではないか?
ある日、練習の帰りに二人で帰る姿を見かけたとき、その思いを強くした。
駅までの長い道中、シナユーは常に車道側にまわり、危なくないように、楽しく会話をしつつも彼女を守り、集中して気を配っているのがわかった。
いつもの気ままな「段差乗っかり癖」も全く出なかった。