そんな子も、シナユーには心を開く。優しげなイケメンだから?

違う。
それだけじゃない。

ちょっと話しただけで、自分が大切にされていると、わかるんだ。どんな話でも、大事に、親身になって聴いてくれるから。なんとも言えない安心感。

どうしてそんな気持ちになるんだろう。

普段の生活の中で、「どうでもいい、大したことない存在」として、悪意はなくても、人に軽視される悲しみを、虚しさを、みんな多かれ少なかれ持っているから。

そんな心のかすり傷に、シナユーの優しさは、じんわり染みていく。

アイツはいつも、気持ちが周囲に、周りの人間に向いていて、自分がどう思われているかには、あまり関心がない。

ごくたまに一緒に帰れたとき、道端の花壇ブロックや歩道の縁石など、段差があるところにいちいち乗っかって歩くのが、小さい子どものようで、不思議でおかしかった。

「シナユー、段差見つけると、とりあえず乗るよな?」

あるとき指摘したら、すごく驚いていて、まったく気づいていなかった。

「うはー、完全無意識だった。俺、チビだったから、乗っかって少しでもデカくなりたかったのかな?」

照れて笑って、暫くは乗るのをやめるが、気づくとまた乗っかって歩いてる。…こいつ、おかしい(笑)。
水溜まりは、避ければいいのに、必ず飛び越える。小学生かよ?

地元の店は、どこに入っても大抵の店の人と顔見知りで、仲がいい。オレなんて、例えばコンビニとか、ろくに店員の顔も見ないのに。