直木賞候補になった『彼方の友へ』や映画化された『ミッドナイト・バス』の著者、伊吹有喜さん。

『なでし子物語』を読んだ時から私は伊吹有喜さんのファンです。

伊吹有喜さんの小説には一貫して愛の眼差しが注がれています。
それは人生いろいろあっても大丈夫だよ、と言ってくれる大きな愛。じわっと涙が出てくる優しいセリフの数々。今回の『雲を紡ぐ』でも強く感じました。

いじめが原因で不登校になった高校二年生の美緒。教師である母に追い詰められ、逃げるようにたどり着いた先はホームスパンの職人である祖父のところでした。


祖父の紘治郎の大きな愛がベースになり、少しずつ美緒は自信を取り戻し、やがてホームスパンの職人になることを決意します。


特に紘治郎のセリフで心にグッときたところは、

「学校に行こうとすると腹を壊す。それほどの繊細さがある。良いも悪いもない。駄目でもない。そういう性分がある。ただ、それだけだ。…」


「そんなしかめ面をしないで、自分はどんな『好き』でできているのか探して、身体の中も外もそれで満たしてみろ」


「…大事なもののための我慢は自分を磨く。ただ、つらいだけの我慢は命が削られていくだけだ。」


熟年夫婦の愛のあり方、美緒の母と祖母の三世代に渡る母娘の関係、親の志を継ぐということ、さまざまな人間模様が織り込まれています。


やっぱり伊吹さん好きだなーとしみじみ思った今作品。


そしてなんと、この『雲を紡ぐ』は直木賞候補にノミネートされました❗️


今度こそ受賞を期待したいです‼️