実花(34歳)は、フラワーコスメ株式会社(仮)の研究開発チームの研究員だ。
実花は日々の研究に余念がない。華やかなPR戦略のコスメ業界だが、コスメの主の成分はどれもほぼ同じであり、既存の配合の再調整や微量の新成分の配合をいかにPRして販売を伸ばしていくか、そこが要である。
勤続12年目ともなる実花は、コスメ研究員として日々研究を重ねており、その辺の事情にも精通していて、自分の新商品開発の結果をマーケティングにどう結び付けるかを考えるのが最近の日課だ。
実花は、今、乳液の開発に取り掛かっている。乳液は、一般的に、化粧水の後にその水分を逃さないための蓋として機能するように保湿成分が配合されている。その保湿成分には油分を含むものがほとんどであるが、問題は油分の酸化である。酸化は肌年齢を早める大きな要因であるから、酸化する原因である油分を取り除いたうえでなおかつ完璧な保湿効果のある商品を生み出す、それが実花のミッションだ。
先日、フラワーコスメ研究所で実花は出会ってしまったのだ。理想の成分とその配合に。事件は現場で起こっているというが、その事件はフラワーコスメ研究所で起こった。
連日の徹夜も厭わないハードスケジュールに持ちこたえるために、まずはスタミナ補給が必要であると、フラワーコスメ研究所員の間ではランチでのネバネバ食材が流行っていた。納豆と刻んだオクラに卵黄を落として海苔がぱらぱらとなっているネバネバ丼のケータリングをいつものように注文した。その日も期待どおりのネバネバ丼が届いたので早速箸をつけた。
その時だ。「きたーーーー!」。実花はこれしかないと思った。今までの努力が報われた瞬間だった。油分に代わる代替成分を発見したのだ。
そして、実花はすぐさまオクラのネバネバ成分の抽出実験にとりかかった。それからのスピードの速いこと。ユカの発明したオクラからのネバネバ抽出方法は、乳液に配合できるレベルにおいては新規の発明であり画期的であった。
その乳液は、製品化の社内稟議まで見事たどり着いた。晴れてフラワーコスメから「オクラ・ミルキーローション」の発売である。
ここから、やっと本題。ちょっと難しい話だから眠くなっちゃう方はまた今度。
今回、実花はフラワーコスメ(株)に勤務する社員としてオクラのネバネバ抽出方法を発明している。この発明についての特許を受ける権利は、誰のものなのか。
実花はフラワーコスメに雇用されて会社の研究施設を使って研究しているからこのオクラ・ミルキーローションは会社のものなのか。
それとも、このオクラ・ミルキーローションは、実花が女性として大切な時期をすべて研究に捧げてまで発明したものであり、したがって、実花が特許をうける権利を持つのか。
※登場人物・会社・商品・物語はすべて私の妄想すなわちフィクションです。
