この日の営業終了後、午前二時にMからのラインが。
帰ってすぐ寝てしまって眠れなくなってしまったとのこと。
昼職で保険会社の事務の彼女は
三年付き合った彼氏と別れて半年が経つ。
寂しいのだろうか。
初回から連絡を取り続け
つい先日新宿で再会し食事をとった。
どことなく北川景子を連想させる整った顔立ちである。
すっと通った鼻筋、パッチリとした目、華奢なスタイル。
人目をひく美しさ。
身長が低いだけである。
家が北区の豊島ということで
タクシーで30分ほどかけて向かう。
丁度芝浦に帰るときと同じくらいの時間と料金だ。
最寄のコンビニで、待ち合わせ。
到着を伝えると、ほどなくしてパジャマ姿の彼女があらわれた。
それでも先日会ったときのイメージと変わらず綺麗だった。
「こんな格好でごめんね」としきりに謝る彼女が
余計にかわいらしかった。
二階建ての民家に着く。
一階は大家が住んでおり
二階を賃貸で彼女に貸しているらしい。
新宿区の無機質なマンションの海に住んでいると
生活の中で人の関わりが垣間見えるところがなぜかホッとする。
部屋に着くとA型というわりには少し散らかっていた。
急遽歌舞伎町からタクシーで向かうことになったので
急いで部屋を片付けたのだという。
抱き寄せると彼女はそっと
腕を自分の背中に回して応じた。
それから二人とも脚を絡ませ合って
ずっと抱き合って眠った。
七時五十分に彼女のアラームが鳴る。
朝か。
最後に時計を見たのが午前四時だったので
四時間ほどしか眠っていないはずなのに
頭はまわっていた。
ここ最近で客と一緒にとる睡眠とは
明らかに質が違うそれだった。
ボーっとテレビのニュースを見ている自分をおいて
彼女はいそいそと準備をする。
一緒に部屋を出て
玄関の横にある年季の入った深緑色の自転車をひき
彼女の家の柵をあけてあげる。
そのまま少しだけ一緒に歩いて
「またね」
と別れを告げた。
ただ見送っただけなのに
自分という非現実の存在と
リアルを生きる彼女の世界の違いを感じると
少し寂しさを感じた。
タクシーで帰ろうかと思っていたが
電車が動いている時間帯だから、と
駅に向かったのは
彼女との時間が水商売の感覚にブレーキをかけてくれたのかもしれない。
電車で帰ろう
帰りに駅まで歩いていくと
会社員時代にこっそり営業中に連れて行ってもらった
ゴルフの打ちっぱなしがあることに気がついた。
懐かしさがよみがえった。
いい時間だったと感じた。
さあ、帰って準備をして幹部会に出席だ。
