これは、平成が始まって間もない頃のお話。
ジェラート屋でのバイトも慣れて、学生生活も後、半年で卒業という頃、バイト仲間に新しいメンバーが加わった。
Cちゃんは地元の大学の1年生で、見た目や雰囲気は、きゃぴきゃぴとした可愛らしい女子学生というより、サバサバとした頭の良い知的な感じだった。
そんなCちゃんには、高校時代から付き合っている彼氏がいると言う。Cちゃんは現役で大学に合格したが、彼氏は不合格だったため、今年は予備校に通いながら、家で受験勉強に励んでいると言う。そのため、「しょっちゅう会うことが出来ず、つまらないし、寂しい。」と言っていた。 ただ、お互いに実家暮らしで地元が同じだから、月1,2回程度は会っているとも言っていた。ただ、相手は受験生なので、どこか遠くに遊びに行くことも出来ず、彼氏の家に差し入れを届けがてら顔を見に行ったり、近所で会って、少し話をして励ましたりすくらいしか今は出来ないとも言っていた。
「でも、受験が終われば、たくさん会えるし、遊べる!だから、頑張って欲しい!」と、目を輝かせていた。
健気だなぁ。偉いなぁ。と、感心してしまった。だって、Cちゃんの大学は共学だし、学校に行けば、素敵な男子や心惹かれる異性も出て来そうなのに、浪人生の彼氏をひたすら応援して待っている。だから、他の彼氏持ちの子たちが、クリスマスで盛り上がっているときでも、「今は、彼にとって大事な時期だから。」と言って、恋人同士の大イベントの日にも彼とは過ごさず、黙々とバイトをこなしていた。
年が明けて、いよいよ受験生にとっては正念場がやって来た。Cちゃんは、益々、彼氏と会う機会が減ったと寂しそうだった。彼氏は予備校の正月特訓クラスに行くとかで、初詣も一緒に行けなかった。しかし、彼氏が無事に志望校に合格出来るようにと、1人で彼の『合格祈願』をしに神社へお参りに行くなどしていた。ほんとに健気...。
2月の中旬、バイトに行くとCちゃんが満面の笑みで「彼氏が複数の大学に合格した!」と教えてくれた。「良かったねぇ~。」と、他のバイトの子たちと一緒に、『おめでとう。』を伝えた。Cちゃんは、「これで、たくさん会える!今年は、いっぱい遊べる!どこに行こうかなぁ。」と、本当に嬉しそうだった。
Cちゃんの彼氏が合格した大学は、どれもが都内の大学だった。地方都市の地元からは通えなくはないが、通うには少し遠い場所にある大学もあった。だから、地元から都内の大学に行く子は、家を出る子も多くいた。その辺をCちゃんは、少し心配していた。遠い学校に行ってしまうと、高校時代のように毎日会えるわけでもないし、今までみたいに月、数回になってしまうかもと。。。確かに。。。と、私も思った。でも、学生だし、都内の学校へ1時間以上かけて通っている子もたくさんいるし、そんなに心配する必要はないんじゃないかと楽観的に思っていた。
Cちゃんの彼氏の合格の話を聞いてから、ちょっと経った3月の初め。Cちゃんとバイトのシフトが同じになった。
Cちゃんの顔が暗い。どうしたのかと聞くと、なんと彼氏に『別れを告げられた。』と言うのだ。えっ~!!なんでぇ~?
1年間、我慢してやっと、実を結んだところなのにぃ~!!驚いて訳を聞くと、彼氏は1年浪人するのだからと、高校の現役のときよりも志望校のランクを上げ、勉強を頑張っていたらしい。その甲斐があって、複数の有名大学に合格していた。
そして、地元からは通えない、合格した中で一番レベルの高い大学に進学することに決めたそうだ。
そこで、『遠距離(実際は、中距離レベル?)になるから、お互いに会うのが難しくなる。別れよう。』とのことだそうだ。
Cちゃんは、驚きと悲しみでいっぱいになっていた。その話を聞いて、私は、何も言えなくなった。
おいおい、おい~っ!と、その彼氏に突っ込みを入れたくなった。
合格したなかで一番レベルの高い大学に進学するのは、わかる。そして、地元を離れるのも理解出来る。だからと言って、合格した途端に今まで支えてくれた彼女を振るとは、どういうことだ? 彼女の気持ちを考えたことはあるのか?
私が察するに、彼氏は有名大学に合格し、新たな気持ちで大学生活を迎えたいのだろう。東京での新しい生活、出会い、学びに期待を膨らませている。それには、異性との出会いも含まれているのだろう。要は、地元でのことをリセットしたいのだ。だったら、Cちゃんが大学生になって、自分が浪人生になった時点で、別れを告げるべきだったんじゃないの?Cちゃんの貴重な1年を無駄にしてしまったのではないか! めちゃめちゃムカついた。 でも、どこか彼の気持ちもわかる私もいて、何も言えなかった。
それから暫くの間、Cちゃんは元気がなかったので心配になっていたが、私も短大を卒業し、バイトも卒業したので、その後、Cちゃんがどうしたのか知る由も無い。Cちゃんは、一途で一所懸命に恋をしていたんだと思う。
そんな彼女も他のバイトの子同様、令和の現在、どこかで幸せでいてくれることを心から願っている。
さあ、いよいよ次は、社会人だ! 就職に纏わる話なども含めて書いていきたいと思います。
