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 実家の薄暗い車庫。その片隅に立てかけられている、年季の入った一本のバットがあります。光を浴びて鈍く輝くそのワイン色の金属バットは、私が小学生の時、父が初めて買ってくれたソフトボール用のものです。

 握りしめると、ひんやりとした金属の質感とともに、幼かった当時の胸が高鳴るような喜びや、新しい道具を持つわくわくした気持ちが、今でも鮮明に蘇ってきます。

 今から四十年以上前。ピカピカのこのバットを手に、いとこたちと小学校の校庭で夢中になって野球をした、夏の日のことです。熱い日差しが傾き、空の色がオレンジ色に変わるまで、私たちは汗だくになってボールを追いかけました。野球を終え、そのまま校庭の遊具で遊び続けているうちに、すっかり日が暮れてしまいました。

そのまま興奮冷めやらぬまま家に帰ると、母がふと私に尋ねました。「あれ? バットはどうしたの?」その一言で、私は背筋が凍るような思いで、大切なバットを校庭に忘れてきたことに気が付きました。

 顔面蒼白になり、私は慌てていとこの家に駆け込み、事情を説明して二人で自転車を飛ばして校庭へ戻りました。しかし、電気もついていない校庭は真っ暗で、何も見えません。二人で校庭を隅から隅まで、必死になって地面を手探りで探しました。何度探しても見つからない。父が初めて買ってくれた、私にとっての宝物。二度と手に入らないかもしれないという恐怖と、大切なものを粗末にした後悔から、私はその場で声を上げて泣き出してしまいました。いとこも一緒に探し続けてくれましたが、結局、その夜バットを見つけ出すことはできませんでした。

 その日から約一週間。毎日、バットのことを気にかけながら、ただ時間だけが過ぎていきました。半ば諦めかけていた私に、まさに奇跡としか言いようのない出来事が起きたのです。

 町内のソフトボールの練習試合に参加していた時のこと。私はグラウンド脇から試合を見ていました。その時、対戦相手のチームの保護者の方が、子供たちにノックをするために握っているバットに、ふと目が止まりました。まさか、と目を凝らすと、それは紛れもなく、私のワイン色の金属バットでした! 私がつけた小さな傷や、グリップに巻いたテープのわずかなほつれまでが、私の記憶の中のものと完全に一致していたのです。

 驚きと動揺で心臓が跳ね上がりましたが、私は夢中でその保護者の方に駆け寄り、事情を説明しました。その保護者の方は、私が探していたものだと理解してくださり、バットは無事に私の手元に戻ってきました。その時の、胸の奥からこみ上げてくるような安堵感と、大切なものが手元に戻ったことへの強い喜びは、今でも忘れられません。

 この出来事は、私にとって大きな教訓となりました。胸をなで下ろすとともに、親からもらった、大切な物を粗末に扱ってはいけないと深く反省した瞬間でした。

 それ以来、父にもらったものは、私にとって単なる「道具」ではなくなりました。父に買ってもらった釣り用のクーラーボックスやリールは、今でも手入れをしながら使い続けています。ゴルフを始めた時にもらったゴルフクラブやボールも、手放すことなく大切に保管しています。そして、父から教わったゴルフのおかげで、現在はゴルフ部の顧問になることができました。

 父からの贈り物は、一つ一つが私に向けられた愛の形であり、思い出が詰まったかけがえのない宝物です。それらを手にするたび、汗と涙で探したあの幼少期の記憶とともに、父との強い絆が感じられます。これからもずっと、父の気持ちと一緒に、これらの宝物を大事にしていこうと、改めて思うのです。