この「とても怒っているし憎いし許さないけれど死んでほしくない」という気持ちは、同じ経験をした人でないとなかなか理解できないものかもしれません。


Aちゃんのご主人は、警察に行って全て話しました。

親族宅から金品を窃盗したこと。そのお金はパチンコのためだったこと。

一部はすでに使ってしまい、換金できるものは質屋に入れ。そして驚いたことに、一部は「捨てた」と言ったそうです。

お金を捨てるなんてそんなことするわけないだろうと、正常な判断ができる人なら思うのでしょうが、ご主人はそんな判断ができないくらいになっていました。


Aちゃんと家族は、河原や商業施設のゴミ箱に捨てたと言うご主人の言葉通りに調べに行って見たそうです。商業施設の方はすでにゴミが回収されて見つかりませんでしたが、河原からは盗んだものが見つかったそうです。

「もうなんの判断もできないくらいおかしくなってたんだろうな」というAちゃんの言葉がとても寂しそうでした。


別居している親族宅からの窃盗は「親告罪」(同居の場合はまた別です)

親族が告訴すれば罪に問えますが、告訴しなければ家庭内の問題です。


Aちゃんの親族は、最初のうちは告訴するつもりだったらしいのですが、やつれて傷ついてボロボロになって帰ったご主人を見て、告訴はやめたと言っていました。

大切な財産を盗まれ、捨てられても告訴しないと判断したのは、きっと苦しかっただろうと思います。


Aちゃん自身も、ご主人をとても怒るつもりだったそうですが、最後は「警察の人がとてつもなく夫を怒ってくれたから、もう私が言うこと無くなった」と言っていました。

警察官の方は「告訴しようと思えばできるのに、そうしなかった親族の気持ちを考えろ!被害にあった側が許す。それがどんな決断なのか考えろ!!」と家族の代わりに怒鳴ってくれたのだとか。