ネブトクワガタ飼育のススメ

●ネブトクワガタについて

 日本では東海地方より西に多く生息している2~3cmほどの小さなクワガタで、上翅に何本も筋があるのが特徴です。国内ではネブトクワガタ、オガサワラネブトクワガタ、オキナワネブトクワガタ、ヤエヤマネブトクワガタが知られており、南西諸島のものは島ごとで亜種が分かれていて少しずつ形質が違います。

 世界的に見ても一部の種を除いて小さいクワガタで、ライフサイクルもだいたい1年以内なので、省スペースな上、短期間で増やすことが可能です。成虫の寿命は活動を開始してから1ヶ月~3ヶ月と短いので、羽化後はすぐに繁殖させることをオススメします。

 小さい体でも、大歯になってくるととてもかっこいいクワガタです。飼育にはマット選びと水分量のコツがいりますが、それさえ出来れば簡単に累代することが出来る種類です。この機会にネブトクワガタを飼育を始めて頂ければ幸いです。

 

●産卵セット

マット選びが重要

 ネブトクワガタの産卵には、完熟微粒子のマットがオススメです。ネブトはマット選びがとても重要です。クワガタ飼育の情報誌等で飼育難易度が少し高めに設定されているのは、マットによって全く生まない場合があるからです。

 その種に合うマットを見つけてしまえば、それほど飼育が難しいクワガタではありません。マット選びでは、安いマットで失敗するより良いマットで確実に産卵させた方が、かえって安上がりだったりします(体験談)。それにネブトは省スペースで産卵~幼虫飼育が可能なので、マットの消費量も思いのほか少ないのです。

 

 私の中で実績があるマットは「RTN製Nマット」です。本土ネブトをはじめ、オキナワネブト、オガサワラネブト、フィリピンネブトなどで30匹以上の幼虫を得ることができています。メスの状態が良ければ、1ヶ月のセット期間で1ペアから100匹得られることもありました。

 他にも、専門店などでネブト専用マットを扱っていることがあるので、いろいろなマットを試してみると良いです。ただし、コバエや線虫が一度沸いてしまうとすぐに全滅してしまうので、雑虫の混入には注意が必要です。ネブト以外にも、ツヤクワガタやマルバネクワガタの仲間で実績があるマットならばネブトにも対応できると思います。

 

■お勧めマット

産まない時の切り札!RTN製Nマット5L

■お勧めケース

【昆虫飼育ケース】クリアースライダー[シーラケース]

コバエシャッター【小】フタ・本体 [シーラケース]

セットの方法

 マットは水分を多めに加えてから使います。はじめにケースの底3cmはマットを固く詰め、そこから上はマットをふんわり詰めます。この時、出来るだけマットがダマにならないように注意します。マットを詰め終えたら、ケースを2cm程の高さから3回ほど落として、マットを整えると良いです。

 あとは、昆虫ゼリーと転倒防止になるもの(割り箸、樹皮、ミズゴケなど)をマットの上に置いてあげれば、ネブトクワガタの産卵セットの完成です。

 ネブトクワガタはオスによるメス殺しが少なく、成虫の寿命が短いので、ペアリングを行う期間を設けず速やかに産卵セットにオスメス両方を入れてしまったほうがよいです。成虫の数に余裕があって、どうしても失敗したくない場合は、オスメス共に複数個体を1つの産卵セットに入れてしまうのも一つの方法です。

 

割り出し

 産卵が成功していれば、産卵セットの側面がら幼虫の姿が確認できるます。孵化して間もない幼虫は小さく弱いので、ある程度幼虫が大きくなってから幼虫を取り出しましょう。種類や飼育温度にもよりますが、目安としてセットから2ヶ月~4ヶ月ほどたつと幼虫達が2齢終期~3齢に育っていて頃です。幼虫用の管理方法に切り替える為に、割り出しをしましょう。

 

幼虫の飼育方法

乾燥は大敵

 ネブトに使うマットは基本的に他のクワガタより水分多めが良いです。特に幼虫が小さくて弱い時や蛹になる時に乾燥気味になっていると、たちまち落ちてしまいます。最初の加水と小まめな霧吹きだけはしっかりしましょう。

 マットは、産卵セットのマットをそのまま使用しても構いませんが、サイズを大きくしたい場合は、添加物が含まれているマットを使用するのも手です。しかし、ネブトはマットの選り好みが強いので、マットを変える際は古いマットも少し混ぜ込むと良いです。突然マットを全て交換してしまうと、ストレスを感じてサイズが伸び悩んだり、最悪の場合はマットが合わず落ちてしまいます。

 

■お勧めマット

 RTN製Uマット5L

 産まない時の切り札!RTN製Nマット5L

■お勧めケース

 硬質クリアボトル 800ml(空ボトル)×1本

 

多頭飼育も大丈夫

 野外でネブトクワガタの幼虫を採集する時、朽木の状態が良い部分にまとまって入っていることがしばしばあります。飼育下でもひとつのケースで沢山の幼虫をまとめて飼育することが可能です。本土ネブトの場合、1500mlのクリアボトルで15匹まとめて飼育しても、9割以上の個体が問題なく羽化しました。目安としては容量100mlに対して1匹程度で問題ないかと思います。小さいケースで飼育するとすぐにマットが乾燥してしまうので、個人的には大きいケースで複数の個体を管理することをオススメします。

 

蛹化のタイミングと土繭

 種類と飼育環境にもよりますが、孵化から半年~1年ほどで蛹になります。ネブトクワガタは蛹になる時、土繭を作ります。他のクワガタはケースの側面で蛹になることが多いので、蛹化の確認がしやすいですが、ネブトクワガタはケース側面に蛹室を作ることが少ないので、いつ蛹になっているかわかりづらいです。

 繭玉を確認したい時は、一度ケースをひっくり返してから土を慎重に掻き分けていくとよいです。本土ネブトの土繭の大きさは2cm~4cmほどの楕円型です。注意して掘り出せばうっかり割ることも少ないです。

 掘り出した繭玉はそのまま埋め戻してもよいのですが、観察しやすい容器にまとめて管理すると成虫になって土繭から出てくるときに確認しやすくて便利です。プリンカップなどの小さな容器に濡れティッシュを敷いて、その上に土繭を並べるとよいです。

 土繭を持ったとき中でコロコロとした感覚が伝わってきたらまだ蛹の状態です。成虫になるとコロコロとした感覚がなくなります。頻繁に土繭を触るとクワガタが弱ってしまうので気をつけましょう。ネブトクワガタが自力で土繭を割って出てきたら、既に繁殖は可能です。

 

●飼育方法まとめ

 乾燥は大敵

  マットの水分を多めにして、小まめな霧吹きも忘れないこと。

 

 マット選びが重要

  無添加完熟微粒子のマットを選び、ハエや線虫を混入させないこと。

 

 蛹化のタイミングと土繭

  孵化から半年~1年で土繭を形成するので、土繭を誤って崩さないこと。

 

 

 

 

 

ノコギリクワガタ飼育のススメ

●ノコギリクワガタについて

 日本ではほぼ全国に生息している中~大型のクワガタで、オスはサイズによって歯形が著しく変化します。国内ではノコギリクワガタ、ハチジョウノコギリクワガタ、アマミノコギリクワガタ、ヤエヤマノコギリクワガタが知られており、南西諸島のものは島ごとで亜種が分かれていて少しずつ形質が違います。

 日本のノコギリクワガタは、初夏に活動を開始して数ヶ月後には寿命を迎えてしまう為、活動後に越冬が出来ません。幼虫期間は半年~1年ほどですが、夏以降に羽化した個体は翌年の初夏までの蛹室内で休眠する為、飼育下では活動を開始するまで気長に待つ必要があります。

 ノコギリクワガタの幼虫は野外で朽木と土の境に見られる為、「根食い」する幼虫と言われています。「根食い」と呼ばれるクワガタは、主に発酵の進んだマットを好んで食べる幼虫が多いので、幼虫はマット飼育が無難です。

 地域やサイズによって、歯の湾曲具合や太さが顕著に変わる面白いクワガタです。繁殖~幼虫飼育は比較的容易ですが、休眠期間をコントロールできないと活動ズレを起こして累代に失敗することがあるので注意が必要です。それでも立派な大歯の♂を羽化させた時の感動はひとしおです。 この機会にノコギリクワガタを飼育を始めて頂ければ幸いです。 

 

●産卵セット

活動開始の合図は後食

 

 まずは活動開始しているかどうか見極める必要があります。樹液や灯火下など、野外で活動個体を採集してきた場合は、即ペアリングもしくは即産卵セットで良いと思いますが、そうでない場合は活動するまで寝かせておく必要があります。活動を開始したかどうかは、餌ゼリーを食べているかどうかで判断しましょう。食欲が十分あると判断できたら次はペアリングをさせましょう。

 

 

メス殺しに注意

 活動開始後は、産卵セットを組む前にしっかりとペアリングをさせましょう。ノコギリクワガタはオスの気性が荒い為、度々オスによるメス殺しが起きてしまうので、ペアリングの短期間だけオスメスを同居させて、交尾を確認したらオスとメスを隔離した方がよいです。

 ペアリングは小さな容器にオスとメスを1週間ほど同居させれば十分です。その間にオスがメスを攻撃するようなら、一度引き離して時間を置いてから再度ペアリングを試みてみましょう。

 オスの気性があまりに荒いようなら、メス殺しを防止する為に、結束バンドやグルーガン等を使用してオスの顎を一時的に固定するのも有効です。

 

産卵セットは発酵マットのみでOK

 産卵させる為には一次発酵マットのみでも問題ありませんが、どうしても失敗したくない場合は産卵木を使用してもよいかと思います。国内のノコギリクワガタはどれもマットのみで容易に採卵が可能です。産卵マットは、可能な限り無添加で粒子の粗くないものがオススメです。

 私の中で実績があるマットは「産卵1番」です。無添加微粒子の一次発酵マットは、材産みの埋め込みマットや浅い発酵を好むクワガタの産卵マットとしてとても重宝します。実績ではハチジョウノコやアマミノコの産卵マットとして使用したとき、2週間で30個以上の採卵に成功しています。キメが細かく、雑虫等の混入も全くない品質の良いマットなので、発酵の浅いマットを好むクワガタ飼育においては一番オススメなマットです。

 

■お勧めマット

[日本産・外国産クワガタムシ産卵用マット] 産卵1番 【10リットル】

昆虫マット ヒラタ・ノコ1番 5L クワガタ 幼虫飼育 産卵

■お勧めケース

【昆虫飼育ケース】クリアースライダー[シーラケース]

コバエシャッター【小】フタ・本体 [シーラケース]

セットの方法

 水分量は多過ぎず少な過ぎず、セットする時はマットをケースの下3割ほどを固く詰め、その上は柔らかく詰めます。あとは、昆虫ゼリーと転倒防止になるもの(割り箸、樹皮、ミズゴケなど)をマットの上に置いてあげれば、ノコギリクワガタの産卵セットの完成です。

 順調にいけばセット開始から1~2週間でケースの側面や裏面から産卵された卵が確認できます。

割り出し

 産卵後2~3週間で卵から幼虫が孵化してきます。孵化して間もない幼虫は小さく弱いので、ある程度幼虫が大きくなってから幼虫を取り出しましょう。種類や飼育温度にもよりますが、目安としてセットから2ヶ月ほどたって幼虫達が2齢まで育っている頃が良いです。割り出し時期が遅くなると親虫が栄養補給の為に幼虫を食べてしまうことがあります。ですので、産卵セットから卵や幼虫が確認できた時点で親を取り出してしまうのも手です。

幼虫の飼育方法

発酵マットと容器

 ノコギリクワガタの幼虫は発酵の浅いマットから完熟マットまで、マットに対する適応力が広いです。サイズを伸ばしたい場合は添加剤が使われているマットを使うことも視野に入れましょう。菌糸瓶を使う場合は幼虫が3齢になってからにしましょう。

 成虫も幼虫も気性が荒い為、1つの容器で複数個体を飼育すると死亡率が高くなってしまうので、極力は単独飼育をオススメします。幼虫飼育に必要な容器の容量は最低でも400mlは欲しいところで、800mlほどでも国内種のオスであれば大歯を出すことが出来ます。餌交換なしで成虫まで持っていくことも可能ですが、サイズを狙う場合は途中で餌交換と容器サイズの見直しが必要です。

 

■お勧めマット

[日本産・外国産クワガタムシ産卵用マット] 産卵1番 【10リットル】

昆虫マット ヒラタ・ノコ1番 5L クワガタ 幼虫飼育 産卵

■お勧めケース

 硬質クリアボトル 800ml(空ボトル)×1本

 

蛹化のタイミング

 種類と飼育環境にもよりますが、孵化から半年~1年ほどで蛹になります。ノコギリクワガタの幼虫は多くの場合、容器の側面に蛹室を作るので、蛹化したかどうかの判断がしやすいと思います。しかし中には側面から確認ができない個体もいて、誤って蛹室を破壊してしまった場合は、人口蛹室に蛹を移してあげる必要があります。

 人口蛹室は少し湿らせたティッシュを小さなプリンカップの下に敷いただけのものでも大方問題はありません。

適度な湿度と温度が保てる環境で、羽化する空間が確保できていれば失敗は少ないように思います。

羽化後の休眠

 種類と飼育環境にもよりますが、羽化後に長い休眠を経てから活動を開始する場合があります。特に国産のノコギリの場合は、夏以降に羽化した個体は翌年の初夏までずっと休眠していますが、飼育温度の変化により急に活動を開始することもあります。休眠中は乾燥に注意しながら、活動しているか定期的に確認しましょう。

●飼育方法まとめ

 休眠期間に注意

  夏以降に羽化した個体は翌年の初夏まで休眠。乾燥に注意しながら後食の有無を確認しよう。

 

 メス殺しに注意

  オスは気性が荒いのでメス殺しに注意。ペアリングは1週間を目安に。

  場合によってはオスの顎を固定してペアリングさせよう。