いま羽田空港国際線ターミナルにいます。

ここ最近の忙しかった事!

気が付いたらフランス行きの日になっていました。

報告が遅くなってしまいましたが、先日は「こころみの会」も無事に終わりました。

何より有り難かったのは見所が満席であった事。

見所から感じる非常に高い緊張感の中、画期的な異流共演の場に出演させて頂いた事、シテを勤めさせて頂いた姉共々感謝の気持ちで一杯です。

また「燦ノ会」と合わせてご覧頂いた方々、本当にありがとうございました!

書きたい事は色々とあるのですが、搭乗時間が迫ってきました。

これから深夜の便でフランスに飛び、新作能「ジャンヌダルク」を上演してきます。

11日に帰国しますが、あちらでも時間があればブログを書きたいと思います。

では行って来ます。
私事で恐縮ですが、最近ipadなる物を購入しました。

きっかけは去年カンボジア公演に行った時、同行した先輩が持っていて「うーん、これは海外に行った時にはメチャクチャ便利だな!」と感じたからです。

今年も来月にフランス公演がある事もあって、思い切って購入。

いよいよ私も現代人への階段を登りつつある訳です。

ただいかんせん初めて火を扱う原始人のような状態で、頼りにしている先輩がいなくては何も出来ないのではありますが、この機械が圧倒的に面白い物であるという事だけはよく解ります。

スティーブ・ジョブズはやはり偉大であるな…、と今更ながら感心している今日この頃です。

いま買おうか迷っている方、いらっしゃるでしょ?

買って、そして僕に色々教えて下さい。
一昨日、燦ノ会が無事に終了しました。

ご来場頂いた皆様、本当にありがとうございました!

出番の直前、鏡ノ間から超満員の見所が見えた瞬間、万感胸に迫る物がありました。

私が演じた「二人静」は個人の演能会では余り上演されない曲です。

以前にも書きましたが相舞に重きが置かれている為に、個人の意思や情熱を出しにくい側面があるからです。

多くの方から「何で二人静にしたの?」と聞かれましたが(経緯は色々とあったのですが)、自分自身ではこれで良かったのではないかなぁと思っています。

この三ヶ月程は「二人静」の事ばかり考えてきたので、曲から離れるのが少し寂しいような気がしています。

ただ私個人としても燦ノ会としても多くの課題が残りました。

これを次回に繋げて行かなくてはと思っています。

また皆様の感想をお聞かせ下さい。

責任を持って会を催すという事は本当に大変な事ではありますが、「こんなに面白い事はないな。」というのも率直な気持ちです。

二回目は来年の六月を予定しています。

今後とも燦ノ会をどうぞよろしくお願い致します。


大島輝久
人の舞台を見ていると違和感がないという事が大事だなぁと思う事が多々あります。


舞台上の役者が板に付いているというか、自然体というか。


そこに至るには役者が曲に向かう中で自身の中の不純物を取り出す作業が必要で、それを稽古というのかもしれません。


いま二人静という曲を稽古していますが、この曲は後半部分の殆どがシテとツレとの相舞になっています。


二人が約40分間も同じ動きをし続ける曲は他になく、稽古も互いの息を合わせる事に終止する事になります。


同じ流儀の同世代の人間でも個人の癖というものは色々とあるもので、一人で舞う時には自由に出来る所もそうはいかない。


ここが当初はかなりのストレスに感じましたが、稽古を重ねるうちに「これは自然体に至る一つの方法論なのではないか?」と思うようになってきました。


テレビで歌番組を見ている時に、歌その物は上手いのに歌い手の表現が過剰で聴いるうちにうんざりしてくる事が時々があるのですが、能の表現方法はシンプルで洗練されているだけに、自己表現が出過ぎるとこれと同じ事がよく起きてしまう。


ここに能役者の内部葛藤がある訳です。


しかし二人静の稽古でひたすら互いの動きを合わせようとしていると、いつも心の奥底に燻る自己表現の欲望が自然と抑えられている事に気が付きました。


こういった心理が見る側にどう伝わるのかは全く別の問題ではあるのですが、最近自分が悩み続けていた事に思わぬ所から一筋の光明が射したような気がしています。
先週ですが、名古屋能楽堂の定例公演に出勤してきました。(長田驍師の隅田川を上演。)


名古屋能楽堂は非常に大きな小屋で、見所の広さは都内最大の国立能楽堂をも凌ぐほどです。


以前、何度か定例公演に伺った時は見所がかなり寂しかった。


目黒の喜多能楽堂や実家の福山の舞台は定員300人強ですから、200人程も入ればまずまずの入りに見えます。


ただ国立や名古屋は600席程あるので200人ではガラガラに見えてしまうんですね。


「今日も見所は寂しいかもしれん。」と思いながら舞台に出ると、ほぼ満席!!


イヤー、驚いた。
これまでとの違いは一体何だ!?


終演後チラシを見直すと、名古屋能楽堂が観客を呼び込む為に様々な企画をたて努力している事が判りました。


公演に先立ち新作能面を公募し、その最優秀作品を実際に当日の舞台「隅田川」に使用する。(実に良く打てていて、舞台でも全く違和感なし。)


イヤホンガイドを装備して受信機を無料で貸し出す。(しかも日本語と英語がある!)


他にも抽選でプレゼントが当たるなど、様々な事を企画し新規の観客を呼び込もうと努力している。


それらが実を結んでの大入りなんですね。


いやはや参りました。


イヤホンガイドは賛否両論あるかもしれませんが、(国立の字幕システムも賛否両論ありましたな。)これは観客側が選べば良い事で先ずは踏み出した勇気と企画力を僕は買いたい。


どの公演も観客動員に苦労する中で、名古屋能楽堂が新たな可能性を感じさせてくれました。


その企画力に負けない充実した舞台を我々は勤めなければならない!と気が引き締まる想いがした名古屋能楽堂定例公演でした。