やっぱり。

 

ですね。

 

JTが専属のたばこ農家に対し、インボイス制度を導入しない場合は、

消費税分を支払わないと通告し、

公正取引委員会から注意を受けたそうです。

 

この制度設計なら、あたりまえに予想されたトラブルです。

ほんとに、弱いものが切り捨てられる仕組みだと思います。

 

ざっくりいうと、

■消費税の仕組み

10万円の仕入れをして、消費税10%をつけて11万支払う。

20万円で販売し、消費税10%をつけた22万を受け取る。

 

20万と10万の差額→利益

消費税分2万と1万の差額→税務署に納める。

 

ただし、

収入についてくる消費税の合計から、仕入れだけでなく外注費や光熱費等、

年間経費で出て行った消費税の合計を差し引いて、残りを税務署に納めます。

つまり、経費で出ていく消費税が多いと、消費税の納税分は少なくなります。

これを、消費税の控除と表現します。

 

■インボイス制度が始まると

インボイス制度に登録して適正な書類を作成した場合のみ、消費税の控除が適用されます。

これは、買った業者も売った業者も両方が登録している必要があります。

 

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つまり、登録しなければ、さっきの例で11万円を業者に払ったとしても控除できない。

自分が登録していても、登録してないところから買うと1万円の消費税控除ができない。

つまり、22万で販売した場合、受け取った2万の消費税全額を、税務署に納めることになる。

 

 

だからインボイス制度に登録しろよ、ってことなんですけど。

 

ここで犠牲になるのが、年商1000万円未満の零細業者です。

現在1000万未満は消費税徴収の対象でない(免税業者といわれます)なので、消費税1万をうけとっても、そのまま自分でもらってOKです。消費税課税業者になりたいです、という登録を自主的にすると、消費税を支払うことになります。

(そんなひと、あんまりいないけど)

 

今回JTは免税業者に対して、インボイスをやらないならJTが消費税を多く負担しなければならないため、登録していれば出来るはずの消費税控除分、値下げをしろ、といったんです。

 

何年も経理をやってきましたが、公正取引委員会からの調査でよく確認されるのが

仕入価格の高騰分を売価に転嫁できているか

消費税分をきちんともらっているか

一方的な価格設定や取引条件の変更をされていないか

です。

 

今回のJTがやってることそのものですよね。

 

 

ちゃんとインボイスに登録して消費税を払うのが当たり前だろ、という人が多いのもわかりますが

会計事務所に働いた経験として、消費税の計算は難しいです。

消費税ナシなら自分で青色申告できると思いますが、消費税がからんでくると、おそらくプロの手を借りることになります。

ふつうの税理士事務所だと、零細でも月額2~3万くらい、決算では10~20万円かかると思います。

少なめにみても年間30~40万の経費が追加されます。

 

1000万円も年商のない免税業者にとっては、ものすごく大きな数字。

もともと、利益なんて300万もでてるのか怪しいもんです。月割りにしたら20もないんじゃないでしょうか。

それに対して、大きすぎる事務経費です。

とくに、個人事業の農家は休みもなく働いて、最低賃金もないし労働基準法にも守られていません。

無理があります。

 

農協で申告を手伝ってくれるところもありますが、おそらく、免税業者の簡単なものは無料でしょうが、インボイスは制度が複雑なので、タダでやってくれるとは思いません。

農協としては、「農協に入れ」というだけになると思います。

 

大きなポイントは、

農協に加入して農協に納める農家は、インボイス制度から除外適用を受けられることです。

これが、票田の農協に対して農水系の議員がおこなった処置です。

つまり、農協にからんでない零細農家は、おいてけぼり。

農協に入ってないのがわるい、ということでしょう。

 

農協に加入していると様々なメリットもありますが、規格がきびしく廃棄する規格外品が増えるとか、栽培作物を勝手に指定されたりとか、自分でやりたい価格やパッケージにはできないとか、自由にいろいろチャレンジしたい人にとってはやりにくい場合もあります。しっかり農家のために動く農協ももちろんありますが、金融業務ばかりが進んで農業振興にあまり意欲を感じられないところも、あります。地域差がすごい。

これでは、農協に入りたくない、という自由意志まで、奪われることになります。

 

農業にかかわらず、発注側がインボイスに登録しない業者を切る、または勝手に消費税分を値下げさせるというのは、発注側としては当然というかやむを得ない対応と思われます。

その分をひっかぶるだけの余裕は、発注側にもないからです。

ただ、もともと日本で圧倒的に弱い立場にある零細の納品業者をつぶす方向を促進する制度というのは、今後の日本経済を発展させるために逆の意味しかもたないのではないでしょうか。

 

インボイスに登録するかは任意、となってますが、実質的に登録しなければ消費税をまるまる負担しなければならないため、登録せざるをえませんし、取引先も、登録してる業者を使わざるをえません。

つまり、ほぼ強制です。

 

起業がしにくくなり、零細から伸びていく芽が摘み取られます。

開業から5年とかの一定期間だけでも、除外適用ができればと思いますが、さらに事務処理の負担がふえますね。

 

一般業務においても、ややこしい制度のため社内でも経理に費やす時間が増えますし、おそらく税理士も値上げをせざるをえません。会計業界やソフト会社がもうかるための仕組み????

 

生産に直接つながらない間接業務経費を増やせば、経済活動にはマイナスです。それだけの時間を確保し、さらにキチンとその分の人件費を払える大規模業者ならともかく、労働基準のない経営陣や一定の「お手当」で残業フリーの管理職にずっしり負担がかかる。

 

こんなことで全事業者の負担を増やして、今まで消費税の納税を免除していた零細からちょっぴりの消費税を巻きあげることをしても、日本の経済活動が活発になるとは思えない。

経済で大きく利益があがって外貨が入ってくる仕組みを作り、経済活動そのものを大きくすれば、所得税も消費税も「がぽっ」と入ってきます。そうしないと、もう、零細は疲れ切っちゃうよ、と思います。

 

公正取引委員会は、今後どれくらい頑張れるのかなあ。蟷螂の斧のような気もしますが、、、、