バイク屋にタイヤ交換に出掛けた。作業を待っている時間店内をうろうろするこの時間が好きだ。この前見たGPZ900Rが納車待ちになっていた。若い人が一目惚れして購入したらしい。こうして古いバイクはまた次の世代の手に渡っていくのだ。

と、そこにひときわオラの目を惹き付けるマシンがあった。

　カタナ1100、キリンカラー

バイク屋がお客さんから引き取ったらしい。

ナンバーを見ると車検が2016年で切れていた。てことは、実に7年以上放置していたことになる。

「これはえれえ年代物じゃねえか」

オラはキリンの真木蔵人のように言いながらカタナを物色した。

画像では伝わってこないがかなりクタクタだった。タイヤはもちろんゴムやプラスチック部分はひび割れ金属部分は宿命的に錆びていた。オラのバイクも古いけれど、このバイクの劣化の雰囲気よりも健康的な感じがした。家も車もそうなんだけど使わないとかえって傷むのが早いのはなぜなんだろう？

マシンは男のロマン

気持ちは痛いほど分かる。手元に置いておけばいつか復活させられる。いつかまた乗るぞという熱い思いを持ち続けられる。俺もいずれはそういう日が来るかもしれない。

と言ったオラに店員が静かに言った。

「また乗り始めるために10万20万かけられますか？」

「ぐはっ！！たすかに！！」

「ほら、そこなんです。」

オラは決めたのだった。この先カタナを降りるときには気持ちよく手放そうと。

でも今はその時じゃない。

抗いながらオラはカタナに乗り続ける。

おはり

バイクを手放す日