「はい!とゆう訳で、番組の締めに入りま~す!」

バナナマンがまとめに入る。
お蔵入りなのでは、と思わずに入れなかったが、
与田祐希も急いで涙と鼻水を拭いた。

「チーム戦としては3期の勝利でした。おめでとう~!!
 さらに個人として、最後まで勝ち残った与田には、
 次のシングルのセンターになる権利が運営から贈られるそうです!」

みんなからの拍手。びっくりして涙が止まった。だけど思い出した。
最後独りきりになって、やっぱり乃木坂46が大好きなんだという強い気持ちを。
だから与田は、首を小さく横に振った。

「その話…私、お断りします」
「え!?」

まわりのメンバーが、驚いた表情で彼女を見つめる。
その思いが彼女の口から語られた。

「乃木坂46のセンターは、先輩たちが繋いできた大切な場所…。
 こんな…殺し合いで決めていいものじゃ無いと思うんですよ。
 だから、私は、このセンターを辞退します。
 でも、きっと、いつか、アイドルとして真っ当に選ばれて、
 もう一度センターに立てるように、これからもっと、がんばります!!」

あの与田祐希の口から、まさかのセンターに対する熱い想いを聞いて、
その場の全員が胸を打たれた様な思いであった。
設楽もまじめな顔で応じる。

「よ~しわかった!与田の気持ちは受け取ったよ!」
「はい!ありがとうございます!」
「じゃあ与田の単独センターはなしということで!」
「はい!…え?」
「他の誰かをセンターにするよう、運営にも伝えておきます」
「え、え、あの…」
「それじゃ~みんなお疲れ様でした~!
 このあとは企業さんがご馳走を用意してくれたので、打ち上げだ~!」
「やった~~~~~~~~!!!!!」
「ちょ、ちょっと、まって~」

みんなの大喜びする歓声に、与田の声がかき消されていった。
一斉にみんなが打ち上げ会場へと移動を始める。
怒涛の展開でもう頭がついていかなかった。
みんなの流れにあわせて、与田もトボトボと通路を移動する。
そのときだ。あの子が声を掛けてきたのは。

「あ、あの…与田さん…」

振り返るとそこには、泣きはらした目の遠藤さくらが立っていた。

「さくらちゃん…」

「本当にすいませんでした!私…先輩に…とんでもないことをして…」

深々と頭を下げる遠藤さくらを、与田祐希はびっくりして止めた。

「えぇ!やめてやめて!あやまらなくていいよ~」
「でも…」
「さくらちゃん悪くないって。むしろ私たち同じ被害者だよ~」
「与田さん…」
「それよりも私、最後まで倒れないさくらちゃんのこと、凄いって思った」
「えええ、凄いのは与田さんですよ~!強すぎです!」

さっきまで殺し合っていた同士。まだ状況についていけてない同士。
2人とも今はなんだかお互いのことが、とても愛しく思えてきていた。
共に極限状態を超えたからこその絆が芽生えたのかもしれない。
ふと周りを見渡すと、他のメンバーもどうやら同じみたいだ。

賀喜遥香は山下美月にくっついてじゃれあっている。
清宮レイは梅澤美波と負けず嫌いを讃えあっている。
柴田柚菜は久保史緒里と微笑んでなぐさめあっている。
早川聖来は佐藤楓と向井葉月に挟まれて笑い合っている。
佐藤璃果は伊藤理々杏とシュッシュと盛り上がっている。
掛橋沙耶香は齋藤飛鳥に首を絞められている。

あの地獄の戦いを超えて、乃木坂46にはまた新たな強い絆が生まれたのだ。
与田祐希と遠藤さくらは微笑みながら、確かにそう感じていた。

(乃木坂46はこれからも、最高のグループだ!)