「それは大発見じゃないか!」
ルアーガの王、セトナは思わず声を荒げた。
昨日、アレルとフォースはルアーガの南東の島
ケメール族の集落の奥へと入って行った。
そのとき、魔族とケメール族の住処が繋がった形に
なったことが気にかかったアレルは
以前バドから譲り受けた地球儀の存在を思い出し
(地球儀に関しては25話参照)
試しに解析してみたところ…
「魔族の古都、オトルトゼに道が通じていたということか…
意外と近くにあるものだな」
ルアーガから見て北東側に位置するオトルトゼ。
そこはかつての魔族の本拠地だった場所だ。
特殊な海流と風に守られたその土地は
外からの来客を拒む。
海流が特殊で渦潮があり、船では行けず、風の影響で飛竜での
侵入もできない。むろん、飛行船や気球も論外である。
なので、もう何千年も人が寄り付かない場所であったが
魔族の末裔は穴を掘り、地下住居を広げ、宝石の採掘できる坑道を掘り進めたところ、
ケメール族の坑道とつながってしまったのだ。
ながい年月をかけてのありがたくない邂逅。
だが、アレルたちにとってはチャンスである。
大量の書簡や、貴重品などが
採掘されず、オトルトゼにそのまま残されているという
文献は山ほどある。
さすがに、魔族に許可を取らず勝手に探るわけにはいかない。
その交渉に誰かが向かわなければならないのだが…
「では、アレル、さっそくオトルトゼに向かってほしいのだが。」
セトナはアレルにオトルトゼに向かうよう要請した。
「俺が?ですか…」
「適任、だろ?」
セトナはそう云うとアレルは苦笑した。
「よろこんで。」
…しばらく忙がしい。
ゼイラに自分のことを話すのはもう少し先になりそうだ。
・・・・・
それから、翌日。
アレルはサーベルとノッヂを引き連れて
ケメール族の暮らす島に出向いた。
先日の移住話から数日。
ケメール族からこの島を出ようという
若者が居たのは本当で、そうした若者は
移動魔法で動かしたルアーガの巨人用住居に本当に住み始めた。
宝石を持参し彫金職人のキィルのもとに
弟子として入ったものも数名いるらしい。
動かした住居にはまだまだ空きが目立つが
他の国の大柄な一族たちからも居住の申し出があるようで
なかなか、大規模な移動魔法も無駄ではなかったと思われる。
昨日、魔族側から書簡の返事が来た。
それなりのものを頂ければ、通行は邪魔しないということだ。
そこで、ルアーガはできるだけの大金を用意して
オトルトゼへの進行を目指していこうという算段だ。
ルアーガの国家予算へも匹敵する額の
用意を黄金で用意した。
「いざとなったら俺たちが魔族をぶった切る!」
サーベルがそう息巻いたが
「いや、今回はできるだけ穏便に済ませたいんだ」
アレルが制止した。
「でも、なんかあった時のために俺たちを指名したんだろ?」
ノッヂがそう口を出す。
「それはそうだが、できるだけ穏便に。
もし、交渉が決裂しても手は出さず、逃げに転じること。」
「わかった」
ノッヂとサーベルはルアーガ1,2の腕の立つ武闘派だ。
以前のアレルだったら一人で乗り込むところだが
今は自分の身の安全を図りたい理由がある。
…ゼイラである。
あと袖口だけになったらしいアラン編みのニットの
完成も間近だ。
袖を通さず死んでゼイラを悲しませることだけはしたくない。
守るものができて、死に対して対策を講じる知恵がついた。
ケメール族の引率で、坑道に入り、長い通路を越えると
魔族の道先案内が待機しておりバトンタッチされた。
「いよいよ、魔族側の本拠地に乗り込むんだな。」
ノッヂが子供のように生き生きした顔を見せる。
坑道をしばらく進み、魔族の居住空間が見えてきた。
もともと、ルアーガからオトルトゼのある島まではそう遠くない。
ルアーガの南東に向かえば案外すぐそばにあったのだ。
今まで、手段が無く、行ったことはなかったものの。
アレルは、歴史上に有益な場所に訪れることができるという
わくわく感と、魔族との交渉が上手くいくかどうかという
不安で浮き沈みしていた。
「ベッキオヘローア」
引率の魔族が合図して扉を開いた…
第36話 終わり 第37話に続く…
***
アレルがノッヂとサーベルを引き連れて
魔族との交渉に臨みます。
結局、まだ自分の話をあれこれあって
ゼイラにできてないアレルですが
物語は佳境に向かいます。
できるだけ早く続きをお届けしいたいです。
この小説ブログもそろそろ開始1周年を迎えます。
(昨年の12月に始めたのです。)
半ばごろはなかなか時間が確保できず、
かなり更新頻度が下がってましたが
最近また盛り返してきたので
このままラストまで勢いづいて頑張ります!
年内の終結を目指したいです。
今後ともよろしくお願いします。