実に久しぶりの更新です。
時折素敵な作品に出会っては楽しませていただいていましたが、なかなか記事アップに至らず・・・。
ともあれ、今度こそ、書く勢いが鈍らないうちに一記事アップすることにします。
数年前に私を虜にし、でもブログ記事を完成できずに終わった小説「孤島の鬼」。
言わずと知れた推理作家・江戸川乱歩の作品「孤島の鬼」。
昭和初期に書かれたことを忘れるほどに読みやすく、怪奇が支配する世界観の中に美しい男性二人の耽美な描写にあふれた小説「孤島の鬼」。
その「孤島の鬼」が、コミカライズされていたとは!
そして、つい先月に完結巻が出ていたとは!
一気にむさぼり読み、原作の素晴らしい再現と、コミカライズならではの素敵なアレンジに、うっとり溺れさせていただきました・・・![]()
作者様(そして出版社)に、ただただ感謝です。
最初に記しておきますが、この作品は、原作・コミック版共に、一般のBL作品のような「決定的な」描写は非常に少なく、ハッピーエンドでもありません。
そして、殺人事件が一応の主題になっていますので、恋愛要素の入らない場面も長く続きます。
ただし!
原作の随所にちりばめられている心理描写からして、これはもう、同性愛こそが真のテーマとしか思えない内容です。
つまり、BL特有の「決定的」描写は少ないですが、心理描写が存分に楽しめます。
その心理描写は緻密で繊細で上品で、女性向け作品として作られたのではないかと思えるレベル。
私の中では「究極のBL」といえる作品です。
この記事ではストーリー紹介は割愛し、とりとめもなく思いの丈を綴ることにします。
(実は、以前記事を書き上げられなかったのは、ストーリーをまとめるのに挫折したのも一因で・・・)
第1巻では、二度の殺人事件とトリック解明までが描かれます。
第2巻では、メイン二人が思い思いに事件解決を決意し、絶海の孤島・岩屋島へ。
第3巻では、洞窟の迷宮が主な舞台。そしてクライマックス。
登場人物:
諸戸道雄 (もろと みちお) (31)
優秀な頭脳と高貴な容姿を併せ持つ美青年。
医学部卒業後、自宅の研究設備で日々動物実験に勤しむ。
過去のトラウマから女性を嫌悪し、学生時代に出会った箕浦をひたすら愛し続ける。
箕浦金之助 (みのうら きんのすけ) (25)
少年の面影を残した美しい容姿を備え、異性も同性も魅了する。
貿易会社で事務に従事。
相思相愛の恋人・初代を殺人事件で失う。
諸戸を尊敬しているが、彼が自分に寄せる感情はよく理解できていない。
この二人のビジュアライズが、もう神です。
このような美しい二人を生み出してくださったことに、私は感謝感激です。
他の登場人物も、素晴らしい再現ぶり。
二人のヒロインはとても愛らしいし、素人探偵・深山木(みやまぎ)氏や北川刑事は、泥臭い魅力がよく出ていました。
全体的に、現代風な人物のビジュアルとレトロな服装や背景の組合せがとても素敵にマッチしています。
それにしても、諸戸氏はつくづく紳士です。大人の男です。
当時の社会的制約は現代とは比べものにならないくらい大きかったようではありますが、同性として許されるぎりぎりの範囲で頑張っています。
それでいて「頑張る」ゆえの苦悶が、本人の言動の端々からうかがえるところにまた悶えます。
彼が一線を越えてしまう数少ないシーン。
これは原作・コミック版共に、ページ数はほんの少しなのですが、そこに至るまでにいかほどの葛藤があったかを思うと、ものすごい濃密さを感じます・・・。
(でも、あの洞窟のシーンは、できることならコミック版では数倍延ばしてほしかった...)
そして、箕浦氏。
原作を読んでいて、例えば、同性を引き寄せる男の涙ってどんなだろうとか、
自分に好意を持っていると知っておきながらこんなことを言う(する)ってどうなんだろうとか、
ちょっと想像しにくい部分もいくつかあったのですが、
このコミック版で、その辺りのもやもやが見事に(?)払拭されました。
この箕浦くんならありです。全て許されます!(笑)
箕浦氏は、天然小悪魔という言い方もできるのかな。
手は握らせるけど自分からは握り返さない、
一線を越えられると全力で逃げる、
嬉しそうに思い人(女性)の話をする、etc.
と、傍目には、諸戸氏にすごい残酷なことをしています。
(ただし、コミック版で見ると、残酷シーンのどれもがかわいすぎる・・・
)
もっとも、原作・コミック版、併せて読むうちに、箕浦氏の気持ちも分かるような気がしてきました。
思いを寄せる側って、やましい気持ちがあればあるほどに、思いの対象に嫌われたくない一心で、きれいな部分だけ必死に見せようとするのかもしれません。
思われる側にしてみれば、先方の覆い隠している煩悶、というかドロドロした部分をよく知らないまま、「きれいな」好意しか見えないわけで。
その「きれいな」好意を突っぱねるのは、難儀なことのように思えます。
ましてや、才色兼備の完璧男の諸戸氏が、極めて上品な物腰で好意を示すわけですよ。
いやな気持ちになんてなれないでしょう。
おまけに諸戸氏が大人の対応を貫いているから、警戒心もなくなるし、無邪気なことも言ってしまいそうな気もします。
しかし、洞窟の闇の中、絶体絶命の状態で、ついに諸戸氏は欲情を露わにします。
箕浦氏にとってはあまりに唐突すぎたのではないのでしょうか。
暗闇で顔が見えない状態で、理性がはじけ飛んだ諸戸氏の手は、いつもの手とは完全に別物(獣?大蛇?)だったようですが、普段の紳士的な触れ方とのギャップを想像すると、ドキドキします。
くどいですが、いっそ、もう少し先まで許してあげてほしかったですけど・・・
コミック版は、基本的には原作に忠実に作られていると思いますが、いくつか変更されている点があります。
思いつく範囲で挙げておくと、
・「悪玉」の容姿的特徴が変更されています。
・「悪玉」による人体実験や商売の実態がソフトな方向に修正されています。
・「悪玉」の末路が原作と異なります。
最初の2つは倫理的配慮からでしょうか。
原作は、いろいろショッキングな要素が多いですからね。
「親方」や吉ちゃん秀ちゃんコンビの設定変更は腑に落ちないところもありますが。
最後の1つは、より劇的な結末に変更されています。
諸戸氏の気持ちがはっきり強調される形になっているので、これもいいなと思いました。
それから、コミック版の素敵なアレンジについて。
この作品は、原作で書かれていない部分も文脈から推察できそうなところをビジュアルで補完してくれたり、適切な台詞を補ってくれていたり、嬉しい配慮が随所に感じられます。
例えば・・・
二人が下宿屋で初めて出会ったときから、親睦を深めるところの描写。(1巻)
箕浦氏が諸戸氏の気持ちに気づく流れも、なるほどという感じ。
「熱い手だね・・・」のシーンは、身悶えしました・・・
コミックで表現するならこうだよね!!とすごく納得。
深山木氏が箕浦氏に助けを乞われて「こんな時に不謹慎だが・・・嬉しいね・・・」(1巻)
確かに、深山木氏はこんなイメージですね。
「秀ちゃん」(第2のヒロイン)のことを話す箕浦氏の口ぶりに、諸戸氏がピクッと反応。(3巻)
果たして顔を赤らめている箕浦氏に顔を寄せて、「なんて顔してるの・・・」
愛する者の心の動きになんと敏感なこと。
そして、洞窟内での諸戸氏の追想。(3巻)
例の場面への秀逸な導入にもなっています。
改めて読み返してみると、追想部分は多くのページを使って丁寧に描かれていますね。
さらに欲を言えば、例の場面にももっとページを・・・(しつこい)
それにしても、初めて出会った場面の箕浦くん(諸戸ビジョン)かわいすぎ!
あれは天使
でしょう・・・
諸戸氏には、この天使に苦しめられる未来が待ち受けていたわけですが・・・
等々。
絵の雄弁さというものに感じ入ります。
このような形で原作を視覚的に再現していただき、私の目と脳は幸福感でいっぱいです。
それなのに・・・人間の欲望というのはなんと果てしないことか。
これだけ素晴らしいコミカライズがされると、さらにもっと!もっと見たい!と私の心が叫んでいます。
例えば、諸戸氏視点のお話をコミック1巻分の長さで読んでみたい。
そして、彼の夢の中ということでいいから、二人の艶っぽい場面をもっと見てみたい・・・。
しばらく興奮の日々が続きそうです・・・。















とときめいたときは、できるだけ文字に残せるように努力したいです。